聴いて楽しむ読書を提案 オトバンク「聴ける本屋さん」オープン 東京・渋谷の天浪院書店に 11月9日まで

2023年11月2日

 

 

「聴ける本屋さん」をPRする(左から)佐久間さん、三浦店主、上田会長、中江さん

 

 音声化された書籍コンテンツを耳で聴くオーディオブック「audiobook.jp」を運営するオトバンクは10月26日から、リアル書店で〝聴く読書〟も楽しめる「聴ける本屋さん」を東京・渋谷区の天狼院カフェSHIBUYAで開いている。11月9日まで。初日のオープニングイベントで、人気声優の佐久間レイさん、俳優で作家の中江有里さんが登壇し、生朗読やトークセッションを行った。

 

 オトバンクは、オーディオブックの普及を通じて、誰もが読書を楽しめる世の中の実現を目指している。現在、読書バリアフリーへの注目が集まっている中、「読書といえば目で『読む』ものと思っている多くの人たちに、『聴く』読書も選べることを訴求する」ことを目的に、10月27日からの読書週間に合わせて「聴ける本屋さん」をオープンした。

 

 展示体験コーナーには、人気作品の紙の書籍とオーディオブックがそれぞれ並べて展示されている。書籍とその本の朗読を聴くためのタブレットやヘッドホンが並び、自由に「立ち読み」「立ち聴き」ができるようになっている。

 

 初日のイベントで、オトバンクの上田渉会長があいさつ。「読書家だった祖父が緑内障で失明したことをきっかけに、『耳でも本を楽しめる』を当たり前の世の中にしたいという強い思いで、2004年にオトバンクを創業した」ことを紹介。

 

 そのうえで、「障害者も高齢者も、誰もが読書を楽しみ続けるような世の中になってほしい。本を読みたいけど、読書することがそもそも苦手という人もいる。だからこそ、いろいろな方法で本を楽しめるようにしたい。『読む』も『聴く』も選べるダイバーシティな書店が増えていってほしい」と期待した。

 

 協力した天狼院書店の三浦崇典店主は、「今年ちょうど10周年を迎えた。本を売るほかイベントなども積極的に実施している。これからはラーニングコミュニティの形成に注力していくことにしている。オーディオブックもその一つだ」と説明。

 

 また、「老眼が始まっていて、読書好きの私にとって読書量が減るのはデメリットしかない。電子書籍もオーディオブックも、読む方法の選択肢が広がるのはいいこと。何で読むかは、ユーザー自身が選べばいい」との考えを示した。

 

展示体験コーナーで紙の書籍とオーディオブックが自由に読み聴きできる

 

「病院にオーディオブック合うのでは」

 

 そのあと、多数のオーディオブック作品の朗読を担当している人気声優の佐久間さんが、サン=テグジュペリの名作『星の王子さま』(岩波書店刊)の生朗読を披露した。また、特別ゲストとして芸能界きっての読書家としても知られる俳優の中江有里さんも登壇し、トークセッションが行われた。

 

 中江さんは、夏に入院をしたエピソードをあげ、「(入院中に)本が読めなくて困ったことがあった。その時にオーディオブックのことを思い出していればよかったと今となっては思っている。オーディオブックを通して、目で読むのが困難な人が読書を楽しめるようになれば、それは書き手にとってもいいことだと思う」と語った。

 

 佐久間さんも、「私も病院にオーディオブックが充実したらいいなとずっと思っている。動けない人、時間を持て余している人にオーディオブックが届けばいい。しっかり聴く必要はなく、眠くなるから聴くというのでもいい。じっとしていないといけない人でも、本を読むことで冒険ができる。今回の『聴ける本屋さん』を通して、オーディオブックがより多くの人に届くようになるきっかけになれば」と話した。