文化通信社は6月16日、「創業・創刊80周年 感謝の夕べ」を東京・台東区の東天紅上野本店で開催し、新聞・出版・書店・印刷など関連業界から約180人が集った。

業界関係者など180人が参加した
第1部では、歴史家・作家の加来耕三氏が「温故知新 歴史から読み解く活字文化の未来」をテーマに講演した。加来氏は明治期の鉄道開通を例に、「新技術の登場が既存産業を駆逐するとは限らない」と指摘し、AIの普及についても悲観する必要はないとの見方を示した。また、外来語を漢字に置き換えてきた明治期の翻訳文化に触れながら、活字が言葉の意味を理解する力を養ってきたと説き、活字文化の歴史的変遷をたどりながら業界の今後の方向性を示した。司会はエッセイスト・フリーアナウンサーの南美希子氏が務めた。
第2部の懇親会では、主催者の文化通信社・山口健代表があいさつに立ち、シャンパーニュ地方のワイン産業発展の歴史を引き合いに、「恵まれたインフラ、品質改良の努力、グローバルマーケティングが唯一無二のブランドを生んだ歴史は、出版・新聞業界が持つインフラの強みを生かした革新の可能性に重なる」と述べた。

多くの関係者が参集
来賓祝辞では、初めに文字・活字文化推進機構の山口寿一理事長(読売新聞グループ本社社長)が登壇し、文化通信社が発信する情報やさまざまな取り組みを評価したうえで、「80年前の1946年には出版社数が約300社から約2500社へ増加し、雑誌の発行点数も約1800点から約3000点に達した」と、当時の出版ブームを振り返った。また、『旋風二十年』が同年のベストセラーとなった経緯にも触れ、この年が戦後の活字文化の幕開けとなったことを紹介した。
続いて、オリックスの宮内義彦シニア・チェアマンが祝辞を述べ、80年前に自身が経験した敗戦直後の混乱した世相を振り返りながら、当時は言論が活発化し、活字が社会にとって大きな支えとなっていたと語った。そのうえで、SNSの普及など情報が氾濫する現在を「ジャーナリズムの危機の時代」と表現し、「ジャーナリストは社会にとって極めて重要な存在である」と強調した。
乾杯の発声を務めた日本書籍出版協会の小野寺優理事長(6月16日当時/河出書房新社社長)は、国内市場の縮小や書店数の減少、資材価格の高騰、物流費の上昇に加え、生成AIへの対応や海外市場開拓という新たな課題に直面していると指摘。そのうえで、同フォーラムをはじめとする文化通信社の事業について、「新たな視座を与えてくれる」と期待を寄せた。
乾杯後には、自由民主党衆議院議員で元経済産業大臣の齋藤健氏(書店議連会長)があいさつし、書店支援の議員連盟を発足させた経緯を振り返るとともに、経済産業大臣在任時には省内にプロジェクトチームを設置し、書店減少への対応を進めてきたと説明。「書店がなくなることは国力の劣化につながる」と訴えた。
続いて、元外務大臣で衆議院議員の上川陽子氏は、公文書管理担当大臣時代に活字文化推進の議員連盟会長を引き受けた経緯を振り返った。結びには、シャンパーニュを好むという文化通信社・山口代表へのユーモアを交え、自身が日本茶業中央会会長でもあることから、お茶を贈りたいと述べ、会場の笑いを誘った。
歓談中には、創業・創刊80周年記念映像の上映とビデオメッセージの披露も行われた。新聞・出版・書店・印刷・デジタルメディアなど幅広い分野の関係者が集い、活字文化を支える裾野の広さを感じさせる交流の場となった。
中締めは文化通信社の星野渉社長が行い、9月4日に活字文化フォーラムを開催し、日本の出版流通と書店の将来をテーマに議論すると紹介して締めくくった。
なお、本会は会場の都合により、関係各社の代表者を中心に招いて開催された。
懇親会の動画はこちら→ https://youtu.be/HmWKQ-nCWj8

文化通信社・山口代表

文字・活字文化推進機構の山口理事長

オリックスの宮内シニア・チェアマン

日本書籍出版協会の小野寺理事長

齋藤議員

上川議員

文化通信社の星野社長

「温故知新 歴史から読み解く活字文化の未来」をテーマに講演した加来氏

司会を務めた南氏
