インプレスグループ 重版にデジタル印刷活用 市場縮小受けDSR利用拡大

2026年8月4日

 出版市場の縮小に伴って効率的な流通への転換が迫られるなか、デジタル印刷機を使った小ロット印刷「デジタル・ショートラン(DSR)」が注目を集めている。そんななか、インプレスグループのグループ会社では重版件数の約半数をDSRにしたり、出版社発のIPビジネスを展開するなど新技術の活用に積極的だ。

 

 DSRは数百部から2000部程度までに適した印刷方法で、数千部以上の単位で効率を発揮するオフセット印刷と、1部から作成できるプリントオンデマンド(POD)の間をカバーし、少部数の重版などに適している。出版流通の合理化を進める日本出版取次協会は今年1月、電子出版制作・流通協議会と共同でDSRの活用を訴える「デジタル印刷活用を推進する共同宣言」を発表。出版流通を持続可能にする技術としても期待されている。

 

実用書・カラーでも実施

 

 インプレスの高橋隆志社長によると、同社がデジタル印刷の利用を始めたのは2015年。物流を委託している京葉流通倉庫が導入したデジタル印刷機(POD)を活用し、倉庫在庫が10冊を切った際に15冊を増刷するといった、在庫自動補充の仕組みとして運用を開始した。当初は単価が高く部数が少なめの技術書や資格書などが対象で、初年度の実績は13件だった。

 

高橋社長

 

 その後、同社の主要ジャンルであるパソコン関連実用書などにもデジタル印刷を活用したいというニーズの高まりを受け、17年度にカラー印刷にも対応。発注先として選んだ石川県の印刷会社ウィルコーポレーションは、展示会で実用書のカラー印刷デモンストレーションを見学したことが取引開始のきっかけだった。

 

 ウィルコーポレーションは新たにロール紙を用いる巻き取り式で300部から1500部程度までの小ロットのDSRに適したデジタル印刷機を導入した。

 

 高橋社長は「在庫はあまり持ちたくないので、半年分程度の出荷見込み量を基準に生産している。25年度は重版件数の約半数がDSRになっている」という。

 

 導入当初は編集部内に品質面などで慎重な意見もあったが、現在はほぼ解消したという。「大部数の増刷が難しいのであれば、DSRで少数でも刷ってもらえる方がありがたい、という感覚に編集側も変わってきている」と高橋社長は話す。

 

印刷データ管理や費用面で課題

 

 一方で、運用面の課題も見えてきた。オフセットで初版を刷った書籍を重版からDSRに切り替える際、修正可能な最終データが残っていないケースがあるという。また、コスト面の事情もあり、同一の印刷会社でオフセットとDSRの両方を発注する一括発注は実現しておらず、別途発注する運用が続いている。また、デジタル印刷機を導入する印刷会社は増えているものの、価格面で折り合わない例も多く、費用面の課題は大きいとの見方を示した。

 

Tシャツなどに 出版IP展開

 

 一方で、インプレスグループでデジタルファースト出版等のメディア事業とEC事業などを手掛けるICEは、PODを活用したTシャツや帽子の製造・販売サービス「pTa.shop(ピーティーエー・ショップ)」を運営し、ほかの出版社のIPを活用した商品の製造を請け負っている。

 

 今年5月には岩波書店がこのサービスを利用して岩波文庫のカバーデザインを再現したTシャツを発売したところ、交流サイトで話題となり、ショップとして発売後の初動受注金額が過去最高を記録した。岩波書店がX(旧ツイッター)に投稿したことをきっかけに拡散し、表示回数は約165万回、リポストも大幅に増えたという。

 

岩波文庫、岩波新書、岩波ジュニア新書のカバーをデザインしたTシャツを販売

 

 このほか、高精細なデジタル印刷機を使ったオンデマンドプリントサービス「fabli(ファブリ)」では、プロスポーツチームが試合写真を用いたオフィシャルフォトブック販売を展開しており、用途は書籍以外にも広がりつつある。写真集分野は発行部数が限られるという特性があるとしながらも、鉄道関連など幅広いジャンルで実績を重ねている。