【出版時評】ICタグのショールーム開設

2022年10月25日

 講談社、小学館、集英社と丸紅グループが設立したPubteXはRFIDのショールームを開設した。棚とレジ、防犯ゲートなどを備え、書店でどのように活用できるのか、実際の様子を見ることができる。見学は同社ホームページから予約可能だ。

 

 箱に入ったまま一瞬で検品でき、棚から抜かずにスキャンするだけで棚卸できる。さらにレジに複数積まれた本を瞬時に読み取り、販売処理されなければ防犯ゲートが反応する。書店関係者の期待を大いに掻き立てる風景だ。

 

 出版業界では以前から本にICタグを装着することが検討され、何度も実験が行われた。しかし、タグと装着のコスト、そして流通・店頭での設備投資の負担が阻んできた。今回はコミックスで大きなシェアを持つ大手出版社が自らタグ付けに踏み出すことでハードルを下げる。

 

 PubteXの計画は、本1冊ずつが印刷・製本会社から出荷され、書店等でお客に渡るまでの全工程を記録する。出版物はおそらくRFIDによる「個品管理」が有効だろう。また、厳しい環境にある書店のDXを推進する大きな力になるはずだ。

 

 タグの装着については、本に貼りこむのかと思っていたが、一部に異論があり、挟み込む形にするという。バーコードでもそんな議論があったが、またかと驚く。前向きな書店を支えるため何とかならないものか。

 

【星野渉】