【出版時評】本にこだわる書店

2022年7月26日

 当社の書店バイヤーセミナーで、くまざわ書店の熊沢宏専務と森岡葉子営業推進部部長に登壇していただいた。くまざわ書店は全国に直営店を230店舗ほど展開する。国内の独立系書店としては最も店舗数が多いと思われるが、本を中心にした店づくりで、複合は文具、CDぐらい。それも入居するショッピングセンターなどからの要望があった場合だという。

 

 全店舗に設ける新聞書評のコーナーには、地方紙なども含めた各紙紙面と可能な限り掲載全点を並べている。書評に載った本を揃えると、本好きの読者が定着する。店側が想定していなかった堅い本も売れるようになり、品ぞろえが充実するという。

 

 さらに、本部では旗艦店舗の平台をもとに、トレンドなどを踏まえた品ぞろえの指標を毎週作成して全店に送るなどの取り組みもしている。何よりも本を販売することに力を入れる姿勢がある。

 

 いまの出版物の価格と利益率では書店経営が成り立たないといわれるが、同社はほぼ出版物の収益で経営を維持し、いまも出店を続けている。それを可能にしているのは、コスト管理だという。そのためのIT活用には力を入れる。自動発注などの仕組みを独自に開発し、人の作業を減らしている。セルフレジの導入も、半導体不足で遅れているとのことだが、こちらも積極的に進めている。

【星野渉】