【出版時評】大手取次の出版流通事業が黒字に

2021年11月30日

 大手取次2社の中間決算は、いずれも書籍部門の伸びと、それに伴う返品減少によって、出版流通事業が黒字化した。書籍は前年同時期に緊急事態宣言による書店の休業でマイナスだった反動や、新規取引店による効果が大きいという。

 

 一方で、いずれの取次でも今年5月以降の書店店頭販売は前年割れが続いているという。前年の「巣ごもり需要」は一時的なもので、すでに落ち着いてきたということか。

 

 また、雑誌は引き続きマイナス傾向が続いている。日本出版販売ではコミックスを除いた雑誌の前年比は7・7%減、返品率は50%を超えている。

 

 出版科学研究所の調査でも年間返品率が50%を超えたことは過去になかった。

 

 取次の中間決算発表では、巣ごもりで多少市場のベースが上がったという話も出たが、全体で見ると市況がそれほど変わったわけではない。雑誌の衰退というトレンドは、むしろ早まったのかもしれない。

 

 両取次の出版流通事業黒字化の背景には、出版社による物流費負担もある。雑誌と書籍の協力要請には多くの出版社が応えている。それは、出版社が取次を必要だと感じている証でもある。ここで得た利益で改革を加速させ、出版社の付託に応えることが、次の時代の出版プラットフォームを作ることにつながるのだろう。      

 

【星野渉】