文化通信社はこのほど、2026年8月の「The Bunka News」デジタル版で月間アクセス数の多かった記事を集計した(集計期間は26年7月25日~8月21日)。最も読まれたのは「出版梓会懇親会に170人超 日販・富樫社長『マージン配分見直す』」(8月7日配信)だった。
出版梓会は7月24日、東京・千代田区の如水会館で「業界・会員社懇親の集い」を開催し、出版社、取次、書店など170人を超える関係者が参加した。日本出版取次協会(取協)会長で日販グループを率いる富樫建氏のあいさつが注目された。
富樫氏は、日販社長として、出版社との取引条件について「コスト上昇のなかで出版ビジネスを持続させるため、マージン配分を見直していく。皆さんと相談していきたい」と表明。「取引条件や価格設定だけで未来がつくれるとは思っていない。価格を変えるのであれば、その価格に見合う購入体験になっているかを見失わないようにしたい」と述べた。
取協会長としては、16日に公表した出版流通合理化案について説明。トラック新法施行に伴い、28年から適用される運賃の適正原価設定による物流コスト増への対応策で、27年4月の実施を目指すと表明。「取次と書店が自らルールを変え踏み込んでいく意思の表れだと受け止めてほしい」と述べた。さらに「読者にとって本との出会いの場が失われることは、社会における多様な知へのアクセスの選択肢を狭めることにつながる」として、出版社にもコスト負担や取引条件見直しへの理解を求めた。
後日、文化通信社は富樫氏に取次協会会長の立場で単独インタビュー「【取次協会・富樫建会長に聞く】取協流通合理化案で目指すもの 出版物流網維持のため『一層自助努力する意思表示』」(8月26日配信)を行った。
デジタル印刷注目集める
2位は「インプレスグループ 重版にデジタル印刷活用 市場縮小受けDSR利用拡大」(同4日配信)。デジタル印刷機を使った小ロット印刷「DSR(デジタル・ショートラン)」が業界内で注目されるなか、インプレスグループのグループ会社インプレスでは重版件数の約半数をDSRに移行。高橋隆志社長に現状を聞いた。
同社のデジタル印刷の利用は15年からで、業界内でも先駆的に取り組んできた。物流を委託している京葉流通倉庫が導入したデジタル印刷機(POD)を活用し、在庫自動補充の仕組みとして運用を開始した。
導入当初は編集部内に品質面などで慎重な意見もあったが、現在はほぼ解消。「大部数の増刷が難しいのであれば、DSRで少数でも刷ってもらえる方がありがたい、という感覚に編集側も変わってきている」と高橋社長は話す。
一方で、運用面の課題として、オフセットで初版を刷った書籍を重版からDSRに切り替える際、修正可能な最終データが残っていないケースがあったり、コスト面の事情もあり、同一の印刷会社でオフセットとDSRの両方を発注する一括発注は実現しておらず、別途発注する運用が続いている。価格面で折り合わない例も多く、費用面の課題は大きいとの見方を示した。
若手書店経営者が鼎談
3位は「鼎談【若手書店経営者が語る書店の未来】書店の価値再構築へ 変化する時代の成長モデル探る」(7月29日配信)。書店業界の若手経営者である豊川堂(豊橋市)の髙須大輔、有隣堂(横浜市)の松信健太郎、リラィアブル(北海道釧路市)の佐藤暁哉の3氏に、新たな店舗モデルの可能性、持続可能な出版流通、そして書店の役割などについて語ってもらった。
書店の粗利改善について松信氏は「長い間、取次や一部出版社が書店マージンを増やすために努力してきましたが、実際にはあまり上がっていない。経営が成り立たないから30%にしてほしい、というだけでは厳しいと思う。書店は書店でリスクを負い、投資をするなど、業界全体で構造を変え、適正なマージン率まで上げる努力が必要」とし、佐藤氏も同調。「版元の利益率を減らしてこちらに還元してくれという単純な話ではない。作家さんの印税は確保する比率がありますし、返品率や返品コストの問題と合わせて考える必要がある」とし「書店側も返品が少ない店は負担が少なくなるなど、納得感のある設計が必要」と提案した。髙須氏は「(出版社からの)報奨金では従業員の給料がなかなか上げられない、設備投資もできないという苦しい状況を発信していかなければならないと思っている」と述べた。
5位は「講談社 トップレベルドメイン『.manga』取得申請へ 海賊版サイト拡大から防衛」(8月6日配信)。本紙が独自記事として配信した。講談社は8月12日、海賊版サイトの拡大防止へ、トップレベルドメイン「.manga」取得を管理団体のICANNに申請した。
近年、マンガ海賊版サイトによる悪質なドメインホッピングが横行。仮に「.manga」をそれら海賊版サイトに取得された場合、正規版流通においてさらなる障害・被害が拡大する可能性が高い。申請が受理され、承認がおりるのは27年春以降となる見込み。講談社は「実際に運用開始となった際も、弊社が独占的に使用するという考えは現在のところ持っていない」と本紙にコメントした。
