「The Bunka News」デジタル版 6月月間閲覧ランキング 1位「パン屋の本屋」   取協の販売単価見直しも注目

2025年7月1日

 文化通信社はこのほど、2025年6月の「The Bunka News」デジタル版で月間アクセス数の多かった記事を集計した(集計期間は5月24日~6月20日)。最も読まれたのは「パン屋の本屋 地域住民の“顔が見える” 街の本屋の品揃え」(5月26日配信)だった。

 

25年6月「The Bunka News」デジタル版アクセスランキングのサムネイル

 

 同記事は公開から1カ月も経たないうちに24年の「The Bunka News」アクセスランキング1位記事「【ソウル通信】27 田舎本屋の店番になった元大統領 文在寅氏が故郷で書店開業(白源根)」(23年5月15日配信)を超えるほど読まれた。

 

 本屋とパン屋を併設する珍しい形態の「パン屋の本屋」は16年に東京・西日暮里にオープン。12坪で在庫冊数4500冊と小規模ではあるが近藤裕子店長が目指すのは「地域の人が日常使いできる街の本屋」。おしゃれなセレクトショップとは意識的に一線を画するコンセプトを掲げ、返品率を一桁台にすることを明確な目標に掲げる。

 

 経営はパン屋との併設で成り立っているとのことだが「書店×パン屋」の相乗効果も目にみえているようで、中庭を利用したおはなし会などのイベントを定期的に開催。本に登場するパンや飲料のサービスや、登場するキャラクターをパンで再現する「書店×パン屋」ならではの取り組みも人気だという。

 

 2位「【決算】未来屋書店 前期 最終赤字6.4億円」(6月17日配信)は、未来屋書店が直近3期連続で最終利益がマイナスであることを伝えた。全国に店舗網を有する大手書店チェーンが3期連続で最終赤字を計上することは珍しい。加えて事業の継続性をみるなかで重要な貸借対照表上で債務超過が続いていることもあまりない事例だ。同社は日本有数の小売グループの事業子会社ゆえすぐに事業継続性が危ぶまれるわけでないが、複数の出版社から返品量の多さが気になるとの声も聞こえている。

 

 3位は「取協 出版社に販売単価見直しを要望 政府の方針に危機感示す」(6月4日配信)。昨年初めて日本出版取次協会(取協)が主催した説明会では、今後も負担増が見込まれる運賃の具体的な試算が示されたが、今回出版社に書籍の価格アップを事実上要請したことは相当のインパクトがあった。

 

 田仲幹弘出版流通改革委員長(トーハン)は「輸送費が固定しているため、トップライン、つまり売上金額を上げさえすれば、業界全体の採算は改善される。売上金額は『販売単価×販売数』で算出されるため、出版社にはその販売単価を見直してほしいというのが今回の趣旨」と強調。一般読者向けの上野の森ブックフェスティバルでは来場者数が増えていることからも、イベントを通じて各団体が協業することで「売上を上げる余地はある」と話した。

 

 価格改定については、説明後の対談に出席したダイヤモンド社・井上直取締役が新刊だけでなく既刊本にも注目。「既刊本をどのタイミングで、どういう手順で値上げするのかということを社内で議論している」と説明。さらに「定価を維持し、抑えることが、逆に最低賃金等が高騰している書店の利益を損なうことになるのであれば、運賃問題のためだけではなく、勇気をもって定価を上げていかなればならない」と値上げを肯定した。

 

 4位は「三洋堂HD 加藤社長「業界の先はない」 新規参入が書店経営できる粗利益率強調」(6月2日配信)。加藤和裕社長は、長年訴えている「書店粗利30%以上」は新規参入者にも当然享受されなければならない条件であると強く主張した。同発言は記者が書店発の粗利改善を進めるブックセラーズ&カンパニーの施策について聞いたことを受けてのものだったが、決算説明会という公の場で書店経営者がブックセラーズ&カンパニーの取り組みだけでは書店業界の根本的な解決にはならないと課題に言及したのは初めてとみられる。

 

 5位「【決算】トーハン 単体は減収減益 コンビニ引き継ぎで雑誌プラスも返品率48%台」(6月2日配信)、7位「【決算】日販GHD 3期ぶり黒字を計上 非取次事業はいずれも営業益増 取次事業の赤字縮小」(同)では、前期に続き両社とも取次事業は赤字だったが各々の経営戦略によって少しずつ差がみえてきている。トーハンが現在進めている中期経営計画「BEYOND」では、物流センター整備やシステム構築等先行投資がかさむため直近数年は黒字化が難しい見通し。

 

 一方の日販はコンビニエンスストア向け配送を終了したことなどで赤字幅が前期比で20億円近く圧縮、取次事業単体では黒字化が近いようだ。