【出版時評】街の本屋が50 周年イベント

2019年1月21日

東京杉並区で営業する今野書店が50周年の記念イベントとして、作家などによるトークイベントを開催した。長年営業してきた書店が閉店する話が多いなか、一独立系書店の創業記念で、これほどの会が開かれるのは希だ。

 

登壇したのは、直木賞作家の山田詠美、角田光代をはじめ、豪華な顔ぶれ。いずれも西荻にゆかりを持ち、この店の利用者たちだ。

 

60年ほど前、学生時代に実業之日本社の『漫画サンデー』でアルバイトをしていた時期から原稿取りで西荻に来ていたという東海林さだお氏が、今野書店の従業員を「みんな本好きで楽しそうに働いている」と表したように、この店は従業員がいい。

 

長年勤務するアルバイトやパートが多く、来店客とも顔なじみになって常連接客ができる。本が好きな様子で、問い合わせれば、すぐに目当ての場所に案内し、客注が届いていれば、聞かれるより先に声をかける。店頭で見ていると、そんな従業員に信頼を寄せる客が多いことがわかる。

 

8年ほど前、相当な覚悟で自家物件から現在の場所に移転してから、競合店の閉店もあり、成長しているという。店構えはいたって正統な街の本屋だが、いつでもメンテナンスされている棚からは、運営する人々の細やかな心遣いが伝わる。本好きの作家たちも、そんなところに居心地の良さを感じるのだろう。

(星野渉)