新潮文芸振興会は、第39回三島由紀夫賞に豊永浩平『はくしむるち』(講談社)、第39回山本周五郎賞に蝉谷めぐ実『見えるか保己一』(KADOKAWA)を選出した。また、川端康成記念会は第50回川端康成文学賞に古川真人「近づくと遠ざかる船」(『文學界』2025年9月号)を選出。両団体は6月26日、東京・港区のオークラ東京で贈呈式を開催した。

左から古川氏、蝉谷氏、豊永氏
新潮文芸振興会の佐藤隆信理事長(新潮社)は冒頭のあいさつで、豊永氏の受賞作について、登場人物一人ひとりのリアリティーを挙げ、「文学の力を改めて認識させられた」と述べた。
三島賞選考委員の高橋源一郎氏は、候補5作について「いずれも魅力があった」と評した上で、豊永氏の受賞作について、23歳という若さでの完成度を高く評価した。豊永氏は受賞のあいさつで、沖縄の言葉「みるく世(弥勒世)」を作品の鍵としたことにも触れ、地域に伝わる言葉への思いをにじませた。
続いて、山本賞選考委員の伊坂幸太郎氏は、蝉谷氏の受賞作について、「文章にも文体にも個性がある」と評し、独自の作風を高く評価。蝉谷氏は、実在の学者・塙保己一を題材にした作品を書くにあたり、研究者の広瀬浩二郎氏に取材を重ねたことを明かした。
また、川端賞選考委員の辻原登氏は、古川氏の受賞作について、長崎の島を舞台に3人のきょうだいが幼少期の記憶をたどる物語だと紹介。古川氏は受賞のあいさつで、家族を題材にした作品を書き続けてきたことに触れた。
川端康成記念会の川端あかり代表理事は、川端賞が1974年の第1回から50回の節目を迎えたことに加え、同記念会では、イオングループのイオンワンパーセントクラブ(理事長・渡邉廣之氏)による新たな支援が決まったことを述べた。会場では川端賞50回を記念して歴代受賞者の写真パネル展も行われた。

川端康成文学賞の写真パネル展
豊永浩平氏は2003年沖縄県那覇市生まれ。琉球大学人文社会学部琉球アジア文化学科卒業。2024年、「月ぬ走いや、馬ぬ走い」で第67回群像新人文学賞を受賞し、同作で第46回野間文芸新人賞・第11回沖縄書店大賞小説部門大賞を受賞した。今回の受賞作『はくしむるち』は、2026年1月刊行の自身初の長編小説。三島由紀夫賞の沖縄出身者の受賞は初となる。
蝉谷めぐ実氏は1992年大阪府豊中市生まれ。早稲田大学文学部演劇映像コース卒業。2020年、『化け者心中』で第11回小説野性時代新人賞、第10回日本歴史時代作家協会賞新人賞、第27回中山義秀文学賞を受賞した。『おんなの女房』で第44回吉川英治文学新人賞、第10回野村胡堂文学賞を受賞し、『万両役者の扇』で第15回山田風太郎賞を受賞。今回の受賞作『見えるか保己一』は第175回直木賞候補作に選ばれた。
古川真人氏は1988年福岡県福岡市生まれ。第一薬科大学付属高等学校卒業、國學院大學文学部中退。2016年、「縫わんばならん」で第48回新潮新人賞を受賞し、同作で第156回芥川賞候補となった。「四時過ぎの船」で第157回芥川賞候補、第31回三島由紀夫賞候補。「ラッコの家」で第161回芥川賞候補を経て、「背高泡立草」で第162回芥川賞を受賞。今回の受賞作「近づくと遠ざかる船」は、長崎のある島と家族を描いてきたサーガ形式の小説群の一作となる。

佐藤理事長

三島由紀夫賞の講評を述べる高橋氏

山本周五郎賞の講評を述べる井坂氏

川端康成文学賞の講評を述べる辻原氏

三賞合同で開催された祝賀パーティー
