実業之日本社 マツオヒロミ『マガジンロンド』売れ行き好調で累計2万8000部に

2022年12月6日

『マガジンロンド』=オールカラーA4 判/ 150㌻/定価2200円(税込)

 

 実業之日本社から12月1日に発売されたマツオヒロミ最新刊『マガジンロンド』の売れ行きが好調だ。初版2万部で刊行した同書はリアル・ネット書店の注文が殺到し、急きょ発売前に3000部を重版、発売後の反響を受けて5000部を重版した(12月20日出来)。

 

 漫画出版部・森川和彦部長と販売マーケティング本部・大田慶一郎本部長は、人気作の多いコミック&イラスト集「リュエルコミックス」で、特に読者や書店員から熱い支持を受ける作品だと話す。部数を累計2万8000部に伸ばした同書だが、さらなる年内重版を目指し、年明けには4万部の大台を狙う。

 

 著者のマツオさんはTwitterフォロワー数17万人超の人気イラストレーター。2016年1月28日に商業初の単行本『百貨店ワルツ』を初版5000部で刊行。発売から2カ月間、毎週5000部の重版が続くロングヒットを記録し、17刷7万5000部のベストセラーとなった。

 

 また、22年4月にホテル雅叙園東京でコラボレーション展示「大正ロマン×百段階段」、22年7月に岡山県の夢二郷土美術館で企画展「竹久夢二×マツオヒロミ」が開かれた。大手新聞社の書評で紹介されるなど、反響が広がり続けている。

 

イラスト&コミックで描く、架空のファッション雑誌

創刊100周年を迎える女性誌「RONDO」という架空の設定で描く

 

 前作で認知度がさらに高まり、6年ぶりとなる今作『マガジンロンド』のテーマはファッション雑誌。創刊100周年を迎える女性誌「RONDO」という架空の設定で、それぞれの時代を彩ってきたファッション誌の記事や広告、関わった人々のエピソードをコミックとイラストで描く。

 

 マツオさん自身が雑誌から多くのインスピレーションを受けて育ったため「雑誌に頑張ってほしい」との気持ちがコンセプトに反影されている。

 

 編集を手掛けた森川部長は「ファッション誌の原型となった19世紀ヨーロッパのファッション・プレートをはじめ、『婦人グラフ』『それいゆ』、そして実業之日本社が大正から昭和にかけて発行していた雑誌『少女の友』などを参考にした」とこだわりを紹介した。

 

 実物の雑誌を意識し、帯ではなくシールを採用(3刷まで)。判型もオールカラーA4判とした。表紙カバーをめくると架空の出版社「近代画報社」と雑誌コードを模した「0Q831」などのユニークな仕掛けが施されている。

 

書店では漫画コーナーに、親和性の高いファン掴む

『マガジンロンド』銀座 蔦屋書店での展開

 

 森川部長は「前作でもそうだったが、画集ではなく、コミック・漫画のコーナーに置いてほしいと書店にお願いしている。コミック&イラスト集と銘打ち、親和性の高いファン層にアプローチするための戦略を立てた」と話す。

 

 また、営業担当の大田本部長は「『百貨店ワルツ』は、即決で置いてくれるコミック・漫画担当者が多くいた。画集ではないのかと戸惑う社内営業部より、現場にいる書店員のほうが作品への理解度が高かった」と振り返る。

 

 そのうえで「新刊の話を持ち込むと書店員からは『待っていた!』と待望の声を聞いた。マツオ先生にはコアなファンが根付いている。注文書を配っている段階で、ひしひしと期待の高鳴りを感じていた」と力を込める。

 

 パブリシティ展開では認知度の向上を狙いながらも、作品のイメージを崩さない広告出稿を行う方針。

 

 12月5日から2週間、東京メトロの銀座線・丸ノ内線、日比谷線のツインスター(ドア横B3ポスター)を掲出。また、12月12日から1週間、銀座駅の掲出スペースで大型ポスターを貼り出す。

 

 新聞宣伝ではマツオさんの出身地、島根県の地元紙「山陰中央新報」と岡山県「山陽新聞」の12月10日付1面に3段の広告を掲載する。

 

国内外で注目集める「リュエルコミックス」

コテリ(Kotteri!)、フランスでサイン会が開かれた

 

 『百貨店ワルツ』のヒットで知名度を上げた「リュエルコミックス」は、オールカラーのコミック&イラスト集のシリーズが好評だ。

 

 重版率は9割を超えており、大田本部長は「それぞれの作品が独特の世界観で、ていねいに作られているのが読者に受け入れられている理由だと思う。けっして量産はできないが、質の高い作品をラインナップに加えながらリュエルコミックスを、リアル書店でもっと広げていきたい」と意気込む。

 

 同シリーズの話題作では、コテリ『Veil』第1巻が累計3万部を突破。ネット書店限定商品を発売するなど、固定ファンへのアプローチに注力。12月13日に発売する最新刊の第5巻でも協力書店でさまざまな特典が用意されている。

 

 また、国内のみならず海外でも注目を集め、フランスの出版社NOEVEGRAFXで現地刊行。3年ぶりに開かれた今年7月のフランス「ジャパンエキスポ」に招待され、サイン会が行われた。

 

 日本国内は女性ファンが多いのに対し、フランスでのサイン待ち行列は男女が半々で、幅広い層の海外ファンがいる盛況ぶりだったという。

 

 森川部長は「翻訳出版は英語圏やイタリア、ドイツ、中国、韓国、意外なところではベトナムからも話があった」と海外での人気ぶりを話す。

 

 リュエルコミックス「コミック&イラスト集」のメインラインナップは次の通り。

▽マツオヒロミ『マガジンロンド』

▽マツオヒロミ『百貨店ワルツ』

▽コテリ『veil』(1~5巻)

▽壺也『暗天街幻想奇録』

▽壺也『暗天街綺想夜曲』

▽Sakizo『精霊大陸 刻印の魔女』

▽Sakizo『Girl meets Sweets』

▽fouatons『すずらん通りの洋服店』

▽旧都なぎ『やがて霧色は曇りなく』(全2巻)

▽黒イ森『琥珀色の空想汽譚』

▽オオタガキフミ『京都と猫と、まだ見ぬ色と』

▽オオタガキフミ『京のとっとき お教えします』

▽西塚em『非合法アンダーランド』

▽さけハラス『私は今、旅をしています。』