【POD特集】対談 紙とデジタル、ブロックチェーンをつなぐプラットフォームとして期待

2022年3月23日

【対談】株式会社グーフ・岡本幸憲代表取締役、セルン株式会社・豊川竜也CEO、株式会社コンテンツジャパン・堀鉄彦代表取締役

 

 出版コンテンツの中で、デジタルプロダクトの比率が急速に高まっています。先日発表された出版科学研究所の2021年市場推計をみても、コミック市場では電子コミックが同20・3%増の4114億円で、コミックスとコミック誌を合わせた数字である2645億円を大きく上回るまでになっています。

 

 出版社にとってデジタルと紙のビジネスをシームレスに展開していく必要性が高まっている中、紙の書籍ビジネスとデジタルの書籍ビジネスをつなぐプラットフォームとしてのPOD に注目が集まっているのではないでしょうか。

 

豊川 セルンのPOD プラットフォームは、昨年11月に第一フェーズの4つのサービスが動き始めたところです。

 

 第一フェーズで目指したのは、ワンソースマルチユースの時代に最適化したプラットフォームです。POD を中心に、コンテンツの受注・製造・販売を一括で行うことのできるインフラとして稼動し始めています。

 

 注目していただきたい機能のひとつとして、グーフさんの技術を使わせていただいている入稿システムがあります。

 

 基本PDF をいただくのですが、印刷に必要な面付けが自動的にできたり、用途に応じて的確に使い分けられるようになります。見え方はPOD のプラットフォームですが、コンテンツの多重活用を簡単にできるようにする、その入口としてPOD があるような仕立てになっています。

 

 世界標準にも対応しており、海外の印刷機にPOD のデータを直接送って書籍をつくるなどの実験もすませています。

 

豊川竜也CEO

 

ステークホルダー多様化に対応したプラットフォームが必要

 

岡本 デジタル化、ネットワーク化をきっかけにしてですが、出版ビジネスに限らずあらゆるビジネスでステークホルダーが多様化してきています。既存の枠組みからはずれた、いわゆるニューエコノミーも広がり、業界の垣根を超えたビジネスモデルも増えています。

 

 実際コンテンツビジネスにどういう変化をあたえているのか。一つは、マーケット拡大の見え方が変化しているということがあります。既存の流通でのビジネスボリュームが小さくなっていたとしても、IP ビジネスまたはコンテンツビジネス全体視点に立って見直すと広がっていたりするわけで、その点、セルンの構想は理にかなっていると思っています。

 

豊川 第二フェーズでは紙の出版にNFTの考え方を紐付ける「フィジカルNFT」の入り口となるようなサービスを、第三フェーズではNFTを活用して、出版発でコンテンツビジネスのあらゆる可能性にトライできるようなシステムを考えています。

 

岡本 NFTは多彩なステークホルダーを巻き込むことに適した技術です。デジタル化、ネットワーク化をきっかけにして、出版のステークホルダーが多様化してきています。既存の枠組みからはずれたところにあるステークホルダーを業界の垣根を超えて取り込んでいける会社でなくては生き残っていけないようになっているということだと思います。

 

 前述の通り、既存の流通でのビジネスボリュームが小さくなっていたとしても、IPビジネスまたはコンテンツビジネス全体視点に立って見直すと広がっていたりするわけです。新しいステークホルダーとつながり、それらを取り込むのにNFTの利用が有効ではないかと考えています。

 

豊川 セルンのプラットフォームは素材管理から、配信まで一貫してできるように考えています。過去の書籍の高精細なデジタル化、アーカイブの管理から配信までワンストップでできることの価値は大きいのではないかと思うんです。

 

 ブロックチェーンの信用基盤を活用することで、権利処理も、インセンティブの「適正分配」も簡単・確実にできるようにもなります。

 

 クリエイターエコノミーなどが進展すると、著者の数が激増し、契約内容も多様化することが容易に想像できますが、そうなった時に一元管理できるプラットフォームの有用性は高いと思っています。

 

 

岡本幸憲代表取締役

 

チャンスを取り込まなければ浸食されるだけです

 

岡本 たとえば既存の出版ビジネスのやり方だけだと縮小していても、新しいフォーマットで提供すると市場が拡大することがある。

 

 POD をやればとりこめるとか、また、グローバルに広げたり、業際的に広げたりすればとりこめる市場がたくさん見えるようになっている。デジタル化でそういう市場を取り込みやすくなっているので、取り込めば広がるし、取り込めなければ広げられない。

 

 もうひとつ重要なのはD2Cの視点でしょう。出版社が直接コントロールできる範囲も広がり、顧客データを直接かつ容易に管理できるようになってきていたりもしています。NFT はその可能性を大きく広げそうですね。

 

 コンテンツをNFT で販売することにより、どんな人が買ってくれたのかとか、いろいろなデータが直接とれるようになってきたりしますからそれを使わない手はない。

 

 これまで通りの流通だけにプロダクトを流し、これまでと同じ顧客接点でしか顧客と向き合わないというのでは、獲得できるパイも限られてしまいます。しかし、IP などに起点を定めることで、マルチな利用が可能となるわけです。

 

 また、紙とデジタルのビジネスの境目も、意識しないようになってくるでしょう。エンドマーケットを見据えてやれることをやるべきです。ワンソースマルチユースにしたりNFT を考えてみたり、デジタル化・ネットワーク化でグローバルマーケットも取り込みやすくなっています。

 

 そして、広がる市場機会を取り込まないと、ただ侵食されてしまうだけに終わる。マーケットの民主化、分散型のプラットフォームが登場するということは、そういうことなんだと思います。

 

豊川 IP 起点に再構築することで、生まれ変わるだろう出版ビジネスの可能性を、できるだけ最大化するためのプラットフォームとして、セルンに期待してもらえればと思います。

 

 セルンの構想は出版のみならずNFT の可能性自体を広げることにもなりそうですね。紙とデジタル、ブロックチェーンを駆使したプラットフォームの将来が楽しみです。

 


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