【80周年を迎えて】 「縁尋機妙 多逢勝因」 よき縁がよき実を結ぶ 文化通信社 代表取締役 山口健

2026年5月1日

 弊社は本年5月1日、創業・創刊80周年を迎えました。読者の皆さまをはじめとする関係各位、当社の先輩諸兄、役員社員の長年にわたるお力添えに心より御礼を申し上げます。


 父・山口比呂志から晩年何度も「オレが死んだら文化通信社を頼むぞ」と託され、落下傘で舞い降りた2018年4月時点での会社は、目的地なく荒海を漂流するボロ船と思えた。以降、〝沈まない船〟とするため社内改革を進めるとともに、〝活字業界のお役に立つ〟一点に絞り、すべてを見直し新たな試みを進めてきた。  


 先ずはウェブ版を刷新し、日々更新する態勢を整備。増刊号「BookLink」はフルカラー化し、現在は2000書店に送付している。


 20年末には「本を贈る文化の醸成」を掲げ、ギフトブックキャンペーンを開催。『読書のススメ』『こどものための100冊』ともに15万部規模に拡大した。「本を買って当てよう!」も来店促進策として定着した。22年には販促チラシ対応の負担軽減と情報流通を目的に「BookLink PRO」をリリースし、約2000端末で活用されている。


 「活字文化フォーラム」は、創業75周年記念シンポジウムを契機に、近年は文字・活字文化推進機構・山口寿一理事長、書店議連会長の齋藤健元経済産業大臣の登壇を得て、政策提言の場としても定着した。


 新聞業界では、21年より毎年、「ふるさと新聞アワード」を開催。専門委員が一年分の記事を読み込み選定し、最終審査員が評価する取り組みとして、価値ある顕彰の場となっている。


 本年2月の創刊80年企画「新聞ミライ会議」は、浜田敬子氏の講演を受けた角田克氏、中尾清一郎氏との鼎談が盛り上がった。持続可能なメディアのあり方と課題について引き続き議論を深めたい。


 BtoCの試みも始めた。昨年、オンラインコミュニティ「ほんのもり」と私設図書室「ほんのもり 駒込本家」を開設。著名人が選んだ本と向き合う黙読の時間・空間を提供し、「本との出会いの場」としての広がりを期待している。


 無書店自治体が4分の1を超え、紙の匂いが充満する本屋で知的好奇心を満たす、かつての〝あたりまえの日常〟が消えつつある。家に本棚が無いことも若者の読書離れを生んでいる。一定規模の建築に課せられる「緑化義務」と同様、「書棚設置義務」があってもよいのではないか。


 粗利益率を上げるために書籍価格を一律に引き上げることは確かに難しいが、帯カバーのない高付加価値本を贈り合う欧米の習慣も参考になる。


 新聞も購読減少が続く一方、米国ではニューヨーク・タイムズ紙がニュースに加え料理やゲームなどを含むエコシステムで読者の囲い込みに成功している。コミュニティ紙も好調で、地方紙・地域紙にとって明るい材料もある。


 課題は山積しているが、ゴールイメージは見えてきた。先ずは少し背伸びした目標を捉え、着実に前進していきたい。


 「縁尋機妙 多逢勝因」。縁が縁を呼ぶ妙味。よき出会いがよき実を結ぶ。敬愛する牛尾治朗さんの著書にある言葉である。次の10年、そして100周年に向け、皆さまとのご縁が豊かな実りとなることを願ってやまない。