文化通信社「ふるさと新聞アワード」 グランプリは「苫小牧民報」の記事

2021年11月2日

最優秀賞に2紙、優秀賞に8紙

「ふるさと新聞アワード』授賞作・一覧のサムネイル

 

 文化通信社は、創業75周年事業の一環として、地域紙が日々発信している記事を表彰する「ふるさと新聞アワード」を創設したが、このほど第1回の授賞記事を決めた。著名な外部審査員5氏による最終選考の結果、グランプリには「苫小牧民報」(北海道苫小牧市)の記事「アイヌの丸木舟 55年ぶり発見 弁天の海岸に2隻」が選ばれた。そのほか、3部門で最優秀賞を2紙に、優秀賞を8紙に授賞する。

 

 文化通信社は、コロナ禍の現在も、地元の社会・経済・文化の発展、活字文化を守るため、日々の新聞発行を続けている地域紙各社を応援する目的で、今年度、同アワードを創設した。

 

 地域紙から記事のエントリーを募り、第1回は20紙から約200本の記事が寄せられた。文化通信社内で「もの」「こと」「ひと」の3部門、各12本を第一次選定。

 

 外部審査員の秋元里奈氏(食べチョク代表)、加来耕三氏(歴史家・作家)、小山薫堂氏(放送作家・脚本家)中川政七氏(中川政七商店会長)、山崎まゆみ氏(温泉研究家)が各記事を評価し、その得票で授賞記事を決定した。

 

 グランプリの苫小牧民報の記事「アイヌの丸木舟 55年ぶり発見 弁天の海岸に2隻」は、同紙の第3社会面に毎日掲載している「落とし物」コーナーに「丸木舟」とあるのを見つけ、記者が取材を続けたところ、アイヌ民族の貴重な文化財であることが分かった。55年前に近くで同じ丸木舟が発見されており、関連図を付けて大きく報じた。

 

 外部審査員の小山氏は「『落とし物』コーナーに丸木舟を記者が見つけ、取材したことから貴重な文化財の保存につながったということそのものが素晴らしい」と、中川氏も「新聞に『落とし物』コーナーがあることにまず驚いた。それを見逃さず調査し、貴重な文化財を発見した記者の〝目〟が素晴らしい」と高く評価した。

 

 グランプリの一報を受けて、苫小牧民報社の編集局報道部記者・半澤孝平氏、小笠原皓大氏は次のようなコメントを寄せた。

 

 「苫小牧署の落とし物記録簿を毎日書き写し、原稿を打つ。その中に『丸木舟』があった。すぐに副署長に取材すると『美術博物館が詳しいよ』との答え。同館の学芸員とは日頃から関係を築いていたこともあり、詳細な説明や写真の提供を受けることができた。苫小牧と名が付く新聞を作る以上、行政史や産業史ではない、市民の歴史を記録する使命がある。それが苫小牧で暮らす人たちの誇りとなっていく、と思ってやってきた。丸木舟の歴史の発掘に関われたこと、その仕事を評価していただけたことをしみじみうれしく思う。初心を忘れず取材を続けていきたい」。