ビジネス書グランプリ2020 豊富なラインアップで幅広い層に訴求

2020年3月31日

2月18日に行われた「ビジネス書グランプリ2020」の表彰式

 

 グロービス経営大学院とフライヤーが主催するアワード「読者が選ぶビジネス書グランプリ」は、今年で5回目を迎え、2月18日には各受賞作発表とその授賞式が行われた。今回、過去最多となる48社の出版社からのエントリーがあり、同アワードは年々その規模を拡大しつつある。

 

【山口高範】

 


 

ライツ社『売上を、減らそう。』

受賞を機に表紙をリニューアル、6000部を増刷

 

『売上を、減らそう。』

 今回、ライツ社が刊行した中村朱美氏による『売上を、減らそう。』は、イノベーション部門を受賞し、総合でも2位を獲得。同社は受賞を好機ととらえ、受賞帯の赤が映える白の表紙にリニューアルし、同時に6000部を増刷したことで、累計発行部数5万部を突破。積極的な営業活動が奏功し、受賞発表から3月1日までの2週間で約6000部を追加出荷した。

 

 販売数も日販トリプルウィンで163・5%の伸長率(受賞前後2週間を比較)を示し、受賞後の好調な動きを受け、3月下旬には10刷目となる4000部を増刷した。同社・営業責任者の髙野翔社長は「受賞がきっかけで出荷数が大幅に伸び、それにともない販売数も伸長した」と受賞後の手応えを語る。

 

 またマネジメント部門を受賞した時事通信社の『学校の「当たり前」をやめた。』は、受賞を受け7000部を増刷。トーハンのPOSデータによると、販売数の伸長率は152%(同)を示し、受賞が追い風となったことで、10万部を突破するに至った。

 

 ライツ社や同じく今回の受賞出版社である新潮社、また過去には河出書房新社や文藝春秋など、ビジネス書専門ではない出版社が受賞していることも特徴の一つだ。

 

読者が選ぶビジネス書グランプリ・井手事務局長

 

 フライヤーの執行役員兼プロモーション担当で、同アワードの事務局長を務める井手琢人氏は、受賞作の一つ『メモの魔力』(幻冬舎)が20代の読者に訴求したことで、大学生協の多くの店舗がフェアに参加している事例をあげたうえで、「当アワードの特徴は豊富なラインアップ。ビジネスパーソンだけでなく、幅広い層から支持されている」と話す。

 

平惣川内店での展開(徳島県/書店)

 

 一方、徳島県に7店舗を構える平惣では、そのうち5店舗でフェアを実施。同社・書籍仕入担当の八百原勝氏は、「雑誌やコミックが強い郊外店が多く、とりわけビジネス書が強いというわけではない」としたうえで、「『売上を、減らそう。』や『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』など、女性が購入されるケースも多く、固いビジネス書だけではないラインアップも当店にマッチしている」と話す。

 

 また東京・新宿区の紀伊國屋書店新宿本店では、3階ビジネス書エリアの通路側エンド台でフェアを展開。同社の中里有里課長は「日ごろビジネス書では目に触れない、多様な分野の書籍が受賞しているので、多くの読者が手にとるきっかけになっている」とフェアのメリットを語る。

 

 井手氏は「今年は著者密着で、初のテレビカメラも入るなど、新たな展開も出てきている。次回以降もフェア参加店を増やすとともに、一般読者をより巻き込んだ企画に注力したい」と今後の意気込みを語る。

 

紀伊國屋新宿本店での展開