公取委、第8回再販協議会 各業界の流通・取引実態を詳細に報告

2008年6月20日

 公正取引委員会は6月19日、公取委大会議室で第8回「著作物再販協議会」(座長=法政大学社会学部・石坂悦男教授)を開催した。今回は、公取委が今春業界に対して行ったヒアリングなどをもとに作成した、業界ごとの「流通・取引慣行の現状」が資料提示された。チャート図を使うなどして3業界の取引の現状と問題点、取り組みなどに言及しており、取引企画課・高橋省三課長が「文化通信」のインタビュー(3月31日付)で述べたように、再販の弾力運用だけでなく流通取引慣行の弊害是正全体に取り組んで欲しいという公取委の思惑が伺える。

 

 今回の協議会に、新聞業界側委員として出席したのは、朝日新聞東京本社・御前一博販売局長、京都新聞社・小林道夫販売局長。出版業界からは小学館・相賀昌宏社長が出席した。

 

 公取委側は、「再販適用除外を廃止すべき」という公取委の方針に変わりはないことを改めて説明。その後、公取委から配付資料の説明、関係業界による説明があり、委員による自由討議が行われた。

 

 これまで公取委が提示してきた資料は、再販制度の弾力運用に向けた関係業界の取り組みに焦点を当て各業界とも数pp.程度のものだったが、今回関係3業界とも20pp.近いもので、弾力運用にとどまらない踏み込んだ内容となっている。

 

 「書籍・雑誌の流通・取引慣行の現状」(19p.)は①書籍・雑誌の市場動向②取次経由の書籍・雑誌の流通・取引慣行の実態③書籍・雑誌の流通・取引慣行の問題及び是正の取組―で構成。①では委託、注文品取引、再販契約、出版社・取次間や取次・書店間の決済などの取引実態を、公取委作成のチャート図も収載して説明。

 

 ②では▽委託配本と書店等の品揃え▽注文品の返品に起因する問題▽再販契約が当然に用いられている▽取次・書店間の決済次期に関する問題―などについて触れている。

 

 一方、「新聞の流通・取引慣行の現状」(14p.)では、①新聞の市場動向②新聞の流通実態③新聞の流通・取引慣行の問題及び是正の取組―で構成。①では、新聞協会加盟社の月ぎめ購読料の種類(08年月現在)を示した。それによると、109社で58種の料金があり、最も多いのが3925円(16社)。最も安いのは南信州の1500円、最も高いは電波新聞の5千円だった。

 

 ②では流通経路のチャート図とともに、収益構造にも触れ、新聞販売店の収入は、「販売収入、折込広告収入、販売促進費(本社からの補助)の比率は48対41対11」と指摘している。

 

 出席委員によると、昨年のような新聞業界への厳しい注文は出なかったものの、「新規参入がない。競争がないのはおかしい」などの指摘があり、これに対し新聞側は「みんなの滋賀新聞」などの事例を挙げて反論したという。

 

 また、消費者団体の委員からは「再販適用除外を外してしまってはどうか」との発言もあったが、時間の関係でそれ以上の踏み込んだ議論はなかったという。