【PR】光和コンピューター ビジュアルジャパングループ会社化で 書店システム導入1500店超に データ連携を推進、出版流通の共通インフラ目指す

2026年11月6日

 出版社・書店向けシステムを手がける光和コンピューターは今年4月、書店向けシステムを提供するビジュアルジャパンをグループ会社化し、取引先の書店は1500店以上に拡大。両社の顧客基盤を生かし、書店システムの刷新や出版社向けデータ提供事業に取り組む。光和コンピューター取締役でビジュアルジャパン代表取締役社長を兼務する多田元晴氏に、グループ会社化の効果と今後の展開を聞いた。

 

ビジュアルジャパンのメンバーと多田氏(後列右端)

 

書店向け事業約2倍に拡大

 

 光和コンピューターは出版社向けの基幹システムに加え、書店向けのPOS(販売時点情報管理)システムやバックオフィスシステムを展開してきた。一方、ビジュアルジャパンは書店向けPOSシステムなどを主力とし、丸善ジュンク堂書店、文教堂、宮脇書店、平安堂などへの導入実績を持つ。ビジュアルジャパンの書店向け事業の売上規模は光和コンピューターとほぼ同程度だった。今回のグループ会社化により、両社のシステムを利用する書店は計1500店を超える規模となった。

 

 事業構成にも変化が生じる。多田氏によると書店向け事業を担う流通ソリューション事業部は年間売上高が両社合計で約9億円規模となる。出版社向け基幹システムを提供する出版ソリューション事業部と並んで、業界シェアNo.1(2026年10月同社調べ)となり、書店向け事業の比重が一段と高まることになる。また、規模拡大の効果について多田氏は「いろいろな仕掛けができると思う」と語る。なかでも重視するのが、出版社とのデータ連携だ。

 

 これまで取引してきた数百店の書店では、規模的に出版社との新たな取り組みを進めにくい面があった。しかし、両社の顧客基盤を合わせると、大手チェーン店舗を除いても約1000店を超えるデータを集約できる。多田氏は、まとまった規模の書店情報を活用することで出版社との連携にも新たな可能性が広がると期待する。

 

両社の強み生かしシステム刷新

 

 ビジュアルジャパンは当面の間、別法人として事業を継続するが、システム面での統合は先行して進める。店頭のPOSは光和コンピューターの製品を基本とし、バックオフィスにはビジュアルジャパンが培ってきた機能を取り入れる方針だ。

 

 その強みの一つが、文具・雑貨の管理機能。ビジュアルジャパンは東京エコール経由で文具店など約150店にもシステムを提供している。書籍と異なり、文具・雑貨は店舗が販売価格を決め、在庫状況に応じて値引きすることもある。そのため、仕入れ原価や値引き後の粗利益を把握する機能が欠かせない。

 

 多田氏は「文具は自由価格で、値引き販売もある。原価や粗利益の管理が重要になる」と説明する。こうした機能を組み込むことで、書籍に加えて文具や雑貨を扱う書店も、仕入れから販売まで一体的に管理しやすくなる。

 

 設計面でも両社に違いがある。ビジュアルジャパンはPOSとバックオフィスを一体化し、価格変更などを連動させやすい。一方、光和コンピューターは両者を分離しており、POSだけを更新できる柔軟性がある。ただし、バックオフィスとの情報の受け渡しが必要になるため、円滑なデータ連携が課題となる。新システムでは双方の利点を組み合わせ、データ連携と更新のしやすさの両立を図る。

 

 「お互いのいいところを持ち寄ったバックオフィスを新たに作る」と多田氏。27年中の提供開始を目指しており、すでに光和コンピューターのPOSを使う書店は、POSを変更することなく、バックオフィスシステムを新しいものに切り替えられるという。

 

 開発体制の見直しも進めている。ビジュアルジャパンでは従来、システム開発の一部を海外の企業に委託していた。しかし、改修を依頼する際に担当者が変わることもあり、細かな要望への対応や作業の優先順位の調整に時間を要する場合があったという。現在は外部委託の範囲を見直すとともに、社内で対応できる業務を増やしている。多田氏は、社内であれば緊急性の高い修正を優先しやすく「手直しが早い」と利点を挙げる。

 

顧客の要望に基づく開発体制

 

 開発の進め方も改めた。新しい機能の開発を先行させるのではなく、利用書店などの要望を確かめ、それに応じた製品を開発する方針だ。

 

 多田氏は「顧客から求められるものだけを開発していく」と説明する。開発コストと需要のバランスを重視した事業運営へと転換し、収益面でも改善が進んでおり、グループ会社化後の初年度から利益を確保できる見通しだ。

 

 両社の開発担当者による連携も始まっており、多田氏は「互いに持つ知見が異なることが、開発の刺激にもなっている」と話す。技術や経験を共有しながら利用書店の利便性向上を目指す。

 

出版社向けに市場在庫可視化

補充・重版に活用へ

 

 グループ会社化によって拡大した書店ネットワークを活用し、出版社向けの新たなデータ提供サービスも計画する。27年春、遅くとも夏までの開始を目指し、すでに出版社への提案を始めている。

 

 これまで書店の販売データは、各大手書店が独自サービスを通じて出版社に提供してきた。データ提供の歴史もあり出版社の大きな指標になっている。

 

 多田氏が新サービスの特色として挙げるのは、中小書店の情報をまとまった規模で把握できることだ。「これまでは大手書店のデータが中心だった。中小書店のデータを加えることで、市場の見え方が大きく変わるのではないか」と期待する。

 

 出版社にとってデータの活用方法は部門によっても異なる。書店営業では、各店の販売状況や在庫を確認し、補充や販促の提案に役立てる。一方、制作部門では市場全体の在庫量や販売速度、消化率などを分析することで、重版の時期や部数を判断する材料が増える。

 

 多田氏は「出版社の担当者によって、データの見方が異なる」と説明。個々の店舗の販売状況を重視する書店営業と市場全体の動向を把握したい制作部門の双方が活用できるデータを提供したいという。

 

 そのためには、より広範囲の書店情報を把握することが重要になる。多田氏は今後、ほかの大手書店チェーンが持つデータも組み合わせることができれば、市場の7~8割程度の動向を把握できる可能性があるとみている。

 

 「市場在庫を見える化できれば、機会損失は相当減ることになる」。販売速度と在庫量を合わせて把握することで、商品が売れているにもかかわらず店頭で品切れになる状況を減らし、出版社の適切な生産・供給につなげたい考えだ。

 

 こうした取り組みの先に見据えるのが、需要に応じた迅速な補充だ。例えば、小ロット・短納期のデジタル印刷「DSR(デジタルショートラン)」と連携すれば、市場で不足する部数を把握し、必要な数量を速やかに製造し、供給する仕組みも考えられる。

 

 多田氏は「現在、市場のニーズが十分に見える化できていないことが大きな課題」と指摘する。データを集めること自体が目的ではなく、実際の販売動向を供給に反映させることで、品切れや過剰在庫の削減につなげる狙いだ。

 

 また、同社が手がける「たなづくり」や補充支援の仕組みとの連携も構想する。データ公開のなかで「たなづくり」や補充も一緒にできる仕組みを例に挙げ、出版社が販売状況を確認するだけではなく、その情報を基に書店への商品供給まで行えるサービスへの発展を目指す。

 

 その際、課題となるのがデータ形式の違いだ。現在はサービス提供事業者ごとにデータの形式が異なり、出版社が複数のサービスを利用する際には加工や集計に手間がかかる。多田氏は「フォーマットが増えることが出版社にとって負担になっている」とし、ほかの事業者にも形式の統一を働きかけていく考えを示した。

 

 独自のデータ提供サービスを運営する書店チェーンにとっても、システムの開発や維持管理には費用がかかる。同社では共通の仕組みを活用することでこうした負担を軽減するとともに、出版社が各書店の販売・在庫データを横断的に分析できる環境を整えようとしている。個々の企業のサービスにとどまらず、出版業界全体で活用できるインフラへの発展を目指す。

 

 新サービスの開始後は、出版社の利用状況や要望を踏まえて機能を拡充する。新たなデータの活用法が定着するまでには半年から1年程度を要すると見ており、その過程で生まれる要望を取り入れながら、「たなづくり」や補充支援との連携など、具体的なサービスの開発につなげる考えだ。

 

データ利用料を書店に還元

 

 新サービスでは、データを提供する書店への収益還元も柱となる。出版社から利用料を受け取り、サーバー費用やシステム開発の償却費などの運営に必要な経費を差し引いた残額を書店へ配分する仕組みだ。多田氏は「維持管理に必要な費用を除き、残る収益は全額書店に還元したい」と語る。

 

 還元規模の目標として年間3億円の利用料収入に対し、システム関連費用を1億円以内に抑え、2億円を還元する試算を示した。

 

 実際の収入や還元額は今後の利用状況によるが、仮に対象書店の売上総額が2000億円となり、売上規模に応じて配分した場合、売上高100億円当たり1000万円が還元される計算だ。多田氏は、書店の収益改善につながる仕組みとして期待を寄せる。なお、還元額の配分方法は、売上規模や提供するデータ規模などを基準に検討している。

 

 一方、出版社側の負担にも配慮する。データ提供の仕組みを集約することで、運営コストを抑えながら、出版社と書店の双方にメリットが生まれる事業を目指す。すでに独自のデータ提供サービスを持つ大手書店チェーンとも従来の取り組みや収益を維持しながら連携する方法を検討しているという。

 

 書店の販売・在庫情報を出版社が販売戦略や重版判断に活用し、得られた収益を書店にも還元する。こうした仕組みを業界全体に広げることで、出版流通の効率化と書店経営の支援を両立させたい考えだ。

 

 多田氏は11月18日、光和コンピューター主催、文化通信社運営の「第33回 光和セミナー」に登壇。「書店データ公開サービスの概要」をテーマに、今回の構想や今後の展開について説明する。