毎日新聞西部懇話会が2年ぶりに総会開催 丸山社長「創刊150年で培った取材力生かす」

2021年12月8日

 九州・西中国地域の毎日新聞主要新聞販売店でつくる西部懇話会の第74回総会が11月21日、北九州市小倉北区のリーガロイヤルホテル小倉で開かれ、会員ら約70人が出席した。通常開催は2年ぶり。

 

毎日新聞西部懇話会の総会であいさつする角川伸志会長

 

 角川伸志会長は「販売網を守っていくために読者を増やし、売り上げを増やし、時代に即した販売店を目指している。丸山社長の日本新聞協会会長就任は、元気の源になっている。販売店はこれからも元気を出し、スピード感を持って時代に柔軟に対応し、強い懇話会を作っていきたい」とあいさつした。

 

 毎日新聞社の丸山昌宏社長は、7月の購読料改定に伴う販売店の顧客対応に感謝した上で「(2022年2月に迎える)創刊からの150年で培った取材力を生かし、紙面内容の強化をしていきたい」などと述べた。

 

 このほか、毎日新聞社から、若菜英晴取締役西部本社代表、荒谷晴久取締役販売担当、砂間裕之執行役員編集編成担当、木本和宏西部本社販売担当局長があいさつ。小菅洋人スポーツニッポン新聞社社長、福田孝志毎日メディアサービス社長が来賓のあいさつを行った。

 

 また、読者の顧客満足度につながる物販・サービス業務を展開した山口県下関市の木村宏氏=山口西部・綾羅木販売店=に販売局長賞が贈られた。

 

 販売担当主任や販売店主らが実践報告を行い、価格改定、セールス制度改革、他紙協業、販売局長賞の現場の4つをテーマに、取り組み内容や課題などを報告した。

 

 懇話会に21年度に入会した店主8人の紹介も行われた。紹介された新入会員は以下の通り(敬称略)。


 若山和拡(北福東・長行販売店)▽石﨑義久(北福東・葛原販売店)▽梅原明(北福東・行橋販売店)▽寺本政光(北福西・高見・勝山販売店)▽小笠原誠司(北福西・水巻南部販売店)▽早川卓志(北福西・岡垣西部販売店)▽中村大輔(福岡西・大手門販売店)▽渚孝一(福岡西・和白販売店)

 

丸山社長あいさつ(要旨)

 

 

 みなさんこんにちは。丸山です。みなさんにお会いするのは本当に久しぶりです。新型コロナ感染症拡大のためとはいえ、昨年から総会や新年会なども開くことが難しくなり、直接みなさんの声をお聞きすることもできず、本当に申しわけありませんでした。しかしながら、この間、厳しいコロナ禍においても、販売店のみなさま方が、毎日新聞を届け、読者獲得に力を尽くしていただいたことに、心からお礼と感謝を申し上げます。感染拡大の波が繰り返されているコロナ禍の中で、新聞に対する関心や価値を見直す傾向が強くなったと言われていますが、これもみなさんが、従業員の感染防止に努めながら、緊急事態宣言などで行動に制約が加わる中、一日も欠かさず読者のもとに毎日新聞を届けていただいたおかげです。本当にありがとうございました。

 

 毎日新聞は今年7月、価格改定を実施しました。後ほど改めてご説明しますが、毎日新聞にとっては27年ぶり、販売政策としてはいわば切り札ともいえるもので、発行本社も販売店のみなさんと気持ちを一つにして反転攻勢をかけていきたいと思います。どうかよろしくお願いします。

 

社長6年目、新聞協会会長就任

 

 私は毎日新聞社の6月の株主総会で社長に再任され、6年目に入りました。毎日新聞グループの持ち株会社、毎日グループホールディングスの社長も再任し、引き続きグループ経営の舵取りを続けます。

 

 また、6月の日本新聞協会の会員総会で日本新聞協会会長に選任され、2年の任期でお引き受けしました。毎日新聞としては、第8代社長・本田親男さんから数えて5人目です。

 

 私は社長就任以来、会社の構造改革断行を掲げ、今その最中でもあり一度は会長就任の要請を固辞しました。しかし選考委員会全会一致の推挙をいただき、価格改定という大きな転機を控えていることに加えて、直近の協会長だった北村正任元社長から12年もたつことから、毎日新聞の存在感を示す意味でも引き受ける決断をしました。

 

価格改定

 

 毎日新聞の本紙月決め購読料を7月1日から朝・夕刊セットは4300円(4037円から)に、統合地域は3400円(3093円から)に改定させていただきました。毎日新聞は消費税率の引き上げに伴う改定を除けば、本体価格を1993年12月から据え置いてきましたので、価格改定は27年7カ月ぶりです。この間、日経新聞や読売新聞が先行して値上げし、有力ブロック紙や地方紙も値上げを進めてきました。朝日新聞は7月から、朝夕刊セットを4400円に、統合版を3500円に改定しました。

 

 価格改定の背景ですが、毎日新聞は、経費節減や業務合理化などさまざまな施策を行い、経営努力を続けてきました。しかし、新聞用紙代の値上げに加え、最低賃金(全国加重平均)は1・5倍に上がり、物流業界を中心とした人手不足とも相まって、新聞輸送・配達にかかるコスト負担が重くなっています。購読者が減少し、コロナ禍による消費マインドの低下で環境が厳しくなる中、今まで経験したことのない値上げとなりました。販売局では「一部も止めない」ことを目標に掲げ、丁寧な読者対応を行うなど万全の対策をとり、販売店のみなさんとともにこの難局を乗り切っていく決意でがんばってきました。4カ月が過ぎましたが、幸い、価格改定を理由にした大きな読者離れは起きていません。これも販売店のみなさんのご努力があったおかげと感謝しています。

 

 特に、西部本社管内では、創刊150年紹介拡張・全国コンクールの目標を、早期に達成できそうな勢いだとうかがっています。心強い限りです。本当にありがとうございます。

 

紙面刷新と西部の対応

 

 価格改定は会社としての最重要政策ですから、販売店のみなさんの努力だけに任せるということを考えていたわけではありません。今回の価格改定に伴う読者対策として、大胆な紙面刷新も行いました。日曜日の朝刊は題字を横に組むデザインに変更しました。毎日新聞が現在の青い題字になったのは今からちょうど30年前の11月5日でしたが、それ以来の大胆な変革でした。紙面の内容も、人物の内面やニュースの深層に迫る大型読み物を中心に、47都道府県のふるさと自慢や、リラックスしながら頭の体操ができる脳トレやパズルのページを展開するなど、家族で一日楽しめる新しいスタイルの日曜朝刊にしました。パズルのページは人気が高く、愛読者センターには、家族で新聞の取り合いになるので困るという電話もかかってきたほどです。

 

 また、価格改定に際しては、西部本社では、販売局、編集局、代表室が連携するホットライン対応を進めました。具体的には編集局が販売局と連係し、本紙と地方版で新たな企画を始めたほか、報道部や各支局にかかってくる問い合わせや苦情の電話に対して販売局が一元的に対応できるようマニュアルを整備するなど全社一体で取り組みました。

 

ニュース重視

 

 魅力的な新聞にするためには、やはり質の高い情報を発信し続けなければなりません。もちろんニュースをおろそかにするわけにはいきません。そのために大切なのは編集部門の取材力です。

 

 先日の17日、盛岡市で開かれた日本新聞大会に新聞協会長として出席し、新聞協会賞を6社に授与してきました。このうち1社は毎日新聞社です。

 

 受賞したのは、東京本社新型コロナ写真企画取材班の写真、「『ぬくもりは届く』~新型コロナ 防護服越しの再会~」でした。毎日新聞社の新聞協会受賞は6年連続で33件目。最多記録を更新しています。このあと砂間編集編成担当から詳しく説明があると思います。

 

デジタル部門強化

 

 デジタル部門も強化しています。2月にニュースサイトを全面的にリニューアルし、記事に「スクープ」「イチオシ」「深掘り」などのラベルをつけて、コンテンツの価値をひと目で分かるようにしました。読みたい記事を探しやすくするため関連記事を時系列で追うことができる機能を加えたほか、サイト内の検索を使いやすくしました。サイトの名前もどんな会社が出しているのかわかりにくいという声もあった「デジタル毎日」から「毎日新聞デジタル」に変え、毎日新聞としてのブランド力強化に努めています。

 

 毎日新聞の購読者であれば、ニュースサイト「毎日新聞デジタル」を無料で読むことができます。データベースで記事検索もできるため、新聞を保管しておかなくても過去に読んだ記事を見つけることができます。これも購読者サービスの一つです。「新聞を購読するとお得ですよ」ということですので、これまであまり大きく宣伝してきませんでしたが、積極的にアピールを続けています。

 

別府大分毎日マラソンがグレード1に

 

 来年2月の開催で第70回を迎える別府大分毎日マラソン大会が、日本陸連ジャパンマラソンチャンピオンシップ(JMC)シリーズのグレード最上位となるグレード1(ワン)の認定を受け、世界陸上の代表選考会に位置づけられました。他にG1の格付けを受けている男子のレースは、東京マラソンと、大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会、福岡国際マラソンの3つです。G1認定は、毎日新聞が育ててきた別大マラソンのレベルや役割、格式の高さが改めて認められたものです。これを機に毎日新聞の認知度もさらに向上させていきます。

 

 また、昨年、中止になりみなさんにも大変ご迷惑をかけ、がっかりさせてしまいました選抜高校野球大会は今春、2年ぶりに開催できました。観客を1日1万人にしぼり、選手と現地チーム関係者全員にPCR検査を実施するなど、万全の感染予防対策を実施し、感染者を1人も出すことなく、大会を無事開催できました。新型コロナの動向は予断を許しませんが、来春に向けて、しっかりと準備を進めていきたいと思います。


販売店経営

 

 無購読者層の拡大に伴う部数減少が続いていることに加えて、新型コロナの影響もあって折込広告の減少、営業活動も制限され、大きな影響が出ています。専売網を維持し部数を堅持することを最も重視したいと思いますが、労務難も加わって、販売店経営は一層厳しさを増しています。

 

 ただ、販売店の存在感はやはり部数です。地域に根差した販売店、読者との信頼関係を強く結ぶ販売店、新しい読者獲得に果敢に挑む販売店作りを継続していきます。部数にこだわって、読者維持に向け取り組んでいただきたくようお願いいたします

 

配達遅れの懸念をテレビテロップで知らせる仕組み構築

 

 台風や地震、豪雨災害など大きな災害が毎年のように起きています。西部本社は2021年から、大雪や大雨などの自然災害で翌日朝刊の大幅な遅配が懸念される場合、民放とNHKのテレビテロップで「配達が遅れるおそれ」をお知らせする情報提供ができるようになりました。昨年秋、福岡県内の全国紙とブロック紙の販売局長会で毎日新聞が提案して運用が決まったものです。新聞各社の系列テレビ局とNHKを通じて、新聞読者に早く、広く情報提供することを目的としています。

 

 各局ともテロップには個別の新聞社名を入れず、「朝刊配達が遅れるおそれがあります」として配達前日の夕方から早朝まで断続的に放送します。今年は、大雪があった1月と、豪雨があった8月にテロップを使いました。併せて西部本社では、遅配が予想される前日の朝刊段階で、1面社告やチラシを使って読者に早めの情報提供を心がけています。

 

来年11月には現地発行開始100年

 

 毎日新聞社は来年2月21日に創刊150年を迎えます。創刊150年記念のCMを制作するなど関連事業はすでにスタートさせており、年明け以降、本格化させていきます。どうぞご期待下さい。創刊150年のキャッチフレーズ「社会をつなぐ、言葉でつむぐ」の下、今後も「毎日ジャーナリズム」をさらに深化させ、新聞の役割を果たしていきます。

 

 これに先立ち西部本社では、今年10月3日付紙面で5万号を迎えました。来年は11月1日をもって西部本社での現地発行開始からちょうど100年という大きな節目になります。これまで、地元に密着した紙面作りを通じて政治、行政、事件事故、人々の喜怒哀楽など幅広いニュースと話題を伝えてきました。引き続き、九州・山口・沖縄の地域振興に寄与すべく情報発信を続けていきます。

 

質の高い報道の継続

 

 毎日新聞社は創刊150年にあたる2022年を「第二の創業」と位置づけ、持続可能な会社に創り変えるため、聖域なき構造改革に取り組んできました。2019年度には過度に高齢化した社員の年齢構成のゆがみを直す取り組みを進め、2020年度には全社的な組織の見直しや役職者比率の是正を進めました。支局の取材体制の再構築、デジタル分野への積極的な人員配置や、新聞の版次見直しも進めました。広告と事業分野を統合した営業総本部の設置や、新規事業への挑戦などに取り組んできました。これも創刊150年以降も日本を代表するメディアとして、社会や人々の暮らしに欠かせない存在であり続けるためです。

 


 販売店のみなさんは、話題になるような報道や、愛読者にとって満足度の高い紙面作りをさらに期待されていると思います。発行本社として、販売店の皆さんが売りやすく、読まれる新聞となるよう、引き続き商品力強化に努めていきます。毎日新聞が創刊150年と、日本で最も歴史のある新聞として歩み続けることができましたのは、愛読者の維持や新しい読者の獲得に懸命に取り組んでいただいた販売店のみなさんの存在なくしては考えられません。価格改定を実施した今年から来年にかけては、毎日新聞社にとっても、販売店のみなさんにとっても、本当に意味での大きな勝負の、そして厳しい勝負の時です。今後も毎日新聞は、販売店のみなさんと手を携えて、この困難な時代を乗り越えていきたいと思っています。一緒になって頑張りましょう。どうぞよろしくお願いします。