書店向け「BooksPRO」説明会、出版情報を全国の書店で共有へ

2020年3月6日

出席した書店員と活発な質疑応答が行われた

 

 日本出版インフラセンター(JPO)と東京都書店商業組合は2月18日、東京・千代田区の書店会館で「BooksPRO」の書店向け説明会を開き、書店員40人が出席した。会場は満席となり、出席者からは注文サイトとの連携について多くの質問が寄せられた。

 

 3月10日にオープンを予定する「BooksPRO」は、書店員や図書館司書向けに近刊・既刊の出版情報を提供する情報ポータルサイト。書店は共有書店コードからログインすることができる。

 

 「BooksPRO」では発売日や予定価格などの書誌情報のほか、書店の棚や担当を意識した大・中・小のジャンル分けをするなどして、出版情報を整理。新刊点数をカレンダー方式で表示することができ、出版社が登録した販促情報も受け取ることができる。

 

 5月にはレスポンシブ化し、スマートフォンでの表示に対応する。また、将来的には取次会社や出版社の注文サイトとの接続を検討し、ログインのシームレス化も視野に入れる。

 

 あいさつで東京都書店商業組合・矢幡秀治理事長(真光書店)は、「近刊情報がどこまで分かるのか、それを使って書店員は何ができるのか。最終的には、欲しい本が欲しい数だけ、欲しいときに欲しい。それが実現しなければ我々は生きていけない」と話し、書店を支えるインフラとしての役割に期待を示した。

 

 続いて、JPO管理委員会・柳本重民委員長(集英社)が「BooksPRO」の構想と経緯を説明。3月10日のオープンにあたり、「各社の尽力もあり、スタートできるが、完成形ではなく、よちよち歩きの第一歩だ。これから書店や取次会社の意見を反映し、より良いものに改善してく。まだ、始まったばかりだ」と意気込みを語った。

 

 また、「基本的な考え方として、書店が存在しない町をこれ以上、増やしてはいけない。それがドイツの書店・取次を見てきた私たちが、『BooksPRO』を構想し、推進してきた原点だ」と強調。

 

 そのうえで、「Amazonや一部の全国書店にだけ届いていた出版情報が全ての書店で共有される。原点は書店ファーストだ。地元の書店がなくなったら、本を親しんでくれるお客さんも減ってしまう」と話し、情報格差の解消を目指すとした。

 

出版情報をすべての書店へ

 

出版社から登録された出版情報の流れ

 

 「出版情報をすべての書店へ!」と題して、雑誌PTリーダー・井上直氏(ダイヤモンド社)が、「BooksPRO」の機能について説明を行った。

 

 「BooksPRO」では近刊情報のほかにも、「JPRO(出版情報登録センター)」の紙と電子の書誌情報データベースを「見える化」し、約240万点の既刊情報も検索ができる。出版社は重版情報やプロモーション・メディア化情報などの販促情報を登録することができ、郵便物やFAX以外の手段で出版情報を書店現場に届けることができる。なお、出版社の近刊情報は60日前登録が推奨されている。

 

雑誌PTリーダー・井上直氏(ダイヤモンド社)

 井上氏は「ほとんどの書店は、前日にならないと、どのような本が入荷されるか分からない」と現状の問題点を指摘。出版社が「BooksPRO」に情報を登録し、発売点数カレンダーが機能することで、「書店は2カ月前にどのような本が発売されるのか分かる」と紹介した。

 

 また、井上氏は、「ドイツやアメリカのように、書店員が置きたい本を自分で選び、仕入れることが大事だ。自動的には無理なので、書店員にとってもすごく大変なことだと思う。しかし、それ以上に、覚悟を決めなければならないのは出版社だ」と述べた。

 

 すぐに実現はしないとしつつも、「2カ月前にどのような本が発売されるのか書店員がチェックし、『売れない』と判断されてしまえば、出版社は本を出せなくなる」と欧米の事例を紹介。

 

 委託流通の利点は残すとしつつも、「書店は自店に合った本を仕入れ、出版社もちゃんと注文数の本を出せるのか。(大量の注文があった場合には)単純な委託という条件では難しいかもしれない」と話した。

 

 出席した書店員からは、「出版社の注文サイトの中には予約注文に対応していないところがあるが、実際に可能になるのか」との質問があった。

 

 柳本委員長は「JPOはインフラを整備する組織なので、そうした戦術的な施策に対し、コミットするのは難しい。しかし『BooksPRO』で書店、取次、書店をつなぐポータルサイトができることによって、予約注文の方向に進めたいとは思っている」と述べた。

 

 注文サイトとの連携について、「BooksPRO」から本を注文できるのかとの質問も寄せらたが、あくまで書誌情報を把握するための情報ポータルサイトであって、注文機能は備わっていないとの回答があった。

【鷲尾昴】

 

訂正とお詫び

 「文化通信」3月2日付の7面掲載の本記事で、見出しと本文に誤りがありました。「日本書店商業組合連合会(日書連)」とあるのは「東京都書店商業組合(東書商)」の誤りです。お詫びして訂正いたします。