今後の辞書に載るかもしれない新語を三省堂が発表!「地球沸騰化」「ハルシネーション」「かわちい」などがランクイン!

2023年12月6日

株式会社 三省堂
~辞書のプロが2023年を代表する10の新語+αを徹底解説!~

辞書のトップメーカーである株式会社三省堂(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:瀧本多加志)は、2023年11月30日(木)に「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2023』選考発表会」を実施し、2023年を代表・象徴する新語ベスト10を発表いたしました。
新語の選定にあたっては一般公募を行い、応募総数は延べ2,207通(異なり1,087語)となりました。これらの投稿などをもとに、辞書を編む専門家である選考委員が一語一語厳正に審査し、「今年の新語2023」ベスト10を選定しました。
【選考結果はこちら】https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/shingo/2023/best10/


危機を明確に警告する「地球沸騰化」

今回大賞に選ばれたのは、本年7月に全世界の平均気温が観測史上もっとも高温になるという予測からアントニオ・グテーレス国連事務総長が発した「地球沸騰化」です。「地球温暖化」への対策は人類の喫緊の課題として取り組まれてきていますが、気温上昇の抑止はなかなか思うように進まず、このままでは破滅に至るという危機感と、さらにいっそうの取り組みを促す意が込められた言葉です。

実際、今年は日本でも異常な猛暑が続き、平均気温は気象庁が統計を取りはじめて以来125年間で最も高かったとのこと。年々、暑さがいや増していることに恐怖すら覚えます。好ましくはありませんが、人類共通の課題として、まさに本年もっとも印象に残る語であり、時代を画するキーワードとして刻まねばならないと思います。

硬派なことばを前に立ちすくむ


本年5月、新型コロナの扱いが「5類感染症」に移行し、さまざまな活動が再開されました。それを反映してか、投稿総数も昨年より大幅に増えました。前回の1,036通に対し、今回は2,207通と2倍以上の投稿となりました。投稿数上位には「蛙化現象」「あれ(アレ・ARE)」などの流行語もありましたが、国語辞典の見出し語としては取り上げにくかったり、すでにある語釈以上のものではなかったりということでランキングには入りませんでした。

一方、ランキングに入ったことばは、結果的に例年になく「硬派なことば」が多く並びました。「硬派」とは、私たちを取り巻く状況と将来を考えるにあたって重く受け止めなければならないという意味です。本年はそういうことばが目立った年でもあったようです。

1位の「地球沸騰化」はまさに世界全体の危機感と、よりいっそうの取り組みが求められているという課題の再認識を求めることば。

2位の「ハルシネーション」とは生成AIが生み出す、まるで幻覚であるかのような事実とは異なる情報のこと。このことば自体はあまりなじみのない語かもしれませんが、投稿数の多かった「生成AI」「Chat(チャット)GPT」に代表されるように本年はAIの衝撃が全世界を覆った年でもありました。「生成AI」「ChatGPT」は実は本年改訂された『三省堂現代新国語辞典第七版』に収録されている語であることからランキングには取り上げられませんでしたが、生成AIのメリットの一方でデメリットのひとつである「ハルシネーション」を今年の新語として上げておくべきだと判断されました。

3位は「かわちい」でした。「かわちい」はSNSなどで急激に使用されるようになっています。「うれちい」「おいちい」など「しい」が「ちい」に変化した語がありますが、感情を主観的に表す語が多く含まれる「しい」のつく形容詞に寄ったかたちをとることで、「うれちい」ということばもより感情を強めた表現として使われるようになっているとも考えられます。

4位は「性加害」「性被害」です。このことばも本年は世間を騒がせました。しかし、このことば自体はここ数年急速に使われるようになったことばです。特に、「性加害」はあまり見られなかったことばです。このことばが一般化したことで性や性別に関する嫌がらせを広く議論の対象にすることができるようになりました。

5位の「○○ウォッシュ」は「ホワイトウォッシュ」や「グリーンウォッシュ」などの語として使われ、企業などが批判をかわすために体裁を取り繕う活動の意を表します。これらの語も2020年代によく目にするようになりました。

6位の「アクスタ」は「アクリルスタンド」の略語で、アクリル樹脂製の板に、アニメ・ゲーム・漫画等のキャラクターやアイドルの写真などを印刷したグッズのことです。「推し活」(ファンとして応援する活動)の一環としても使われています。

7位は「トーンポリシング」。相手の主張に対し、その中身を問題にせず、話し方や態度などを批判して論点をそらすことを言います。

8位は「リポスト」。SNSのツイッターが突然「X」に名称変更となり、「リツイート」も「リポスト」と変更となったことで困惑と混乱が広がりましたが、インスタグラムではもともとリポストの名称であり、そもそも英語の repost は「再投稿」の意味であることから、SNSで他の人が投稿した内容を自分のアカウントに表示させて紹介する、という一般名称として位置づけられたとも言えるでしょう。

9位は「人道回廊」。戦闘地域から民間人を避難させる経路(脱出ルート)のこと。昨年はウクライナ戦争でこのことばが登場しましたが、本年はさらにイスラエルとハマスとの軍事衝突のなか、ガザ地区に開設されたことでさらに見聞きすることになりました。

10位は「闇バイト」。特殊詐欺や強盗など犯罪行為に強制的に加担させられるアルバイトのことです。本年1月、海外から指示して闇バイトによって犯罪を実行していた人物が逮捕されたことで知られるようになりました。

5語の選外

 上記の10語以外に、惜しくもランキング入りを逃した語として「オーバーツーリズム」「蛙化(かえるか)現象」「グローバルサウス」5語が選ばれました。例年に比べて多いのは、このうち4語は本年改訂版が出たばかりの『現代新国語辞典』にすでに収録されていることからランキングに入れられませんでした。「蛙化現象」は先に触れたように投稿数が最も多かったことばとして選外に残しました。

それぞれの言葉を具体的に解説した、さらに詳しい選評はこちら

https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/shingo/2023/best10/Preference01.html

選考委員が選出した10語

上記ベスト10を検討するにあたり、それぞれの選考委員が選出したイチ推しの10語は次の通りです。

『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生:
朝ウナ/蛙化/ちいかわ/地球沸騰化/○○散らかす/ニキ/ハルシネーション/無理/闇バイト/沸く

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生:
アクスタ/○○ウォッシュ/かわちい/社不/人道回廊/性加害・性被害/トーンポリシング/ハルシネーション/ペッパーミル

『新明解国語辞典』編集部:
あれ/推し活/生成AI/セルフレジ/ChatGPT/デコ活/呪い/マイナカード/むにむに/闇バイト

『大辞林』編集部:
アーバンベア/アンコンシャスバイアス/蛙化現象/グローバルサウス/ステルス値上げ/生成AI/地球沸騰化/ビジュ/フェムテック/闇バイト

三省堂の新語には、国語辞典のプロの手による解説(語釈)をつけて発表

ベスト10に選出された言葉には、実際に国語辞典を編んでいる編者が腕をふるって国語辞典としての言葉の解説(語釈)を書きました。シャープな語釈で言葉の本質をとらえる『新明解国語辞典』、シンプルな語釈で要するに何かがわかる『三省堂国語辞典』、高校生の自習を強力に支援する『三省堂現代新国語辞典』、いまの日本語の総体を映し出す[国語]+[百科]辞典の『大辞林』。それぞれの編集方針で異なる語釈の切り口と面白さをお楽しみください。

【大賞】地球沸騰化
ちきゅうふっとうか【地球沸騰化】〈名〉世界の気温が、深刻なほど急激に上昇していること。「━の時代・━を問題視する」《由来》global boilingの訳。二〇二三年七月の平均気温が観測史上最も高くなるという予想に基づいて、当時の国連事務総長が出したコメントから。従来の「地球温暖化」という用語では済まないという認識と危機感を表したもの。
『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生

ちきゅう ふっとうか[地球沸騰化]地球温暖化が深刻になった段階を表現した ことば。[由来]二〇二三年のグテーレス国連事務総長の発言から。
『三省堂国語辞典』飯間浩明先生

ちきゅう ふっとう(ォ)か [0]-[0] -キウ-クワ【地球沸騰化】〔global boiling の訳語〕化石燃料の使用などがもたらす温室効果による地球全体の気温上昇と、それに起因するさまざまな災害の原因としての「地球温暖化」の歯止めのない進行と、それがもたらす破滅への恐れをさらに強調して言う語。産業革命以来の工業化によって得た文明の利便性と引き替えにもたらされた人類未曽有の危機に対し、原因となる温室効果ガス排出の一層の削減を求めるべく、二〇二三年七月に国際連合の事務総長が発した。
『新明解国語辞典』編集部

ちきゅう ふっとうか ちきうふつとうくわ [0] 【地球沸騰化】〔global boiling〕地球温暖化による気候変動が看過できないレベルにあるとして、より深刻で容赦ない段階であることを示す語。二〇二三年七月の全世界の平均気温が観測史上最も高温になるという予測に対して、国際連合のアントニオ=グテーレス事務総長がよりいっそうの対策を促すために使用。
『大辞林』編集部

【2位】ハルシネーション
ハルシネーション〈名〉[←hallucination]人工知能(AI)が、事実とは異なる情報を生み出してしまうこと。「━を警戒する」《由来》もとは「幻覚」の意。その情報の文体そのものは、もっともらしいので、注意を要する。
『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生

【3位】かわちい
かわち・い かはちい⦅形⦆〔俗〕かわいい。「―デザイン・こんな自分が―」〔二〇二〇年代初めに特に広まった ことば〕
『三省堂国語辞典』飯間浩明先生

【4位】性加害・性被害
せい かがい[性加害]性暴力など、性的な害をあたえること。「―をおこなう・―を受ける」(↔性被害(ひがい))
せい ひがい[性被害]性暴力など、性的な害を受けること。「―に遭(あ)う・―を受ける」(↔性加害)
『三省堂国語辞典』飯間浩明先生

【5位】○○ウォッシュ
ウォッシュ(造語)〔wash〕世間に知られては都合が悪いことや不正を糊塗し覆い隠す意図をもって、自らの善行を吹聴し、言い立てること。ウォッシングとも。「グリーン―[5]〔= 環境や健康に対して実際には効果がないにもかかわらず、いかにも環境に配慮し、効果があるかのように見せかけること〕・ホワイト―[5]〔= 汚れを覆い隠すために表面を白く塗りつぶすことから、うわべをつくろい、ごまかすこと〕」
『新明解国語辞典』編集部

【6位】アクスタ
アクスタ [0] 〔アクリル-スタンドの略〕アクリル樹脂製の板に、アニメ・ゲーム・漫画等のキャラクターや人物写真などを印刷したもの。台座に立てて鑑賞したり、写真を撮ったりして楽しむ。
『大辞林』編集部

【7位】トーンポリシング
トーンポリシング〈名〉[←tone policing]議論の中身ではなく、その口調や態度などを問題として指摘し、話を本題からそらすこと。「悪賢い━にひっかかる」《由来》toneは「口調、音調」、policingは「警察による警備や規制」の意。
『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生

【8位】リポスト
リポスト⦅名・他サ⦆〔repost=再投稿(とうこう)〕〘情〙〔SNSで〕ほかの人の投稿を、改めて自分のアカウントで紹介(しょうかい )すること。「気に入った絵を―する」
『三省堂国語辞典』飯間浩明先生

【9位】人道回廊
じんどう かいろう じんだうくわいらう[5]【人道回廊】〔humanitarian corridor〕武力紛争の際、民間人の避難や人道支援物資の輸送などのために一時的に設ける、戦闘を停止し安全を保証する経路。当事者間の協議や、国際社会の要求によって設ける。
『大辞林』編集部

【10位】闇バイト
やみ バイト[3] 【闇バイト】(主としてSNSなどインターネット上で)アルバイトとして募集した者を脅してやめられなくしたうえで、特殊詐欺や強盗などの実行役をさせる犯罪行為。反社会的集団が、自ら手を汚すことなく犯罪を行なうきわめて卑劣な行為。
『新明解国語辞典』編集部

従来の新語・流行語ランキングとの違い

三省堂が募集する「今年の新語」とは、あくまで「今年とくに広まったと感じられる新語」ということで、必ずしも「今年生まれた言葉」ではありません。その中から、特定のジャンルやコミュニティーに偏らないよう、使用者層や使用域の広がりと使用頻度の高さを考慮しつつ、来年以降も使われてゆくであろう日本語を、辞書を編むエキスパートが慎重に選定しました。つまり、辞書に載ってもおかしくない新語をバランスよく認定するのが「今年の新語」です。ベスト10には、実際に国語辞典を編んでいる編者が語釈を付しています。

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株式会社三省堂 営業局 販売企画部
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