電子書籍の売上集計から印税計算、支払処理までを一元管理する「PUBNAVI」が、電子出版領域で培った実績を基盤に、IPビジネスの収益管理へと事業領域を広げようとしている。今年3月には機能を強化した。

売上推移やランキングなど一覧できる「PUBNAVI」トップ画面
「PUBNAVI」は、出版ERPの開発実績を持つ光和コンピューターが、メディアドゥと協同で開発し、2022年にサービスを開始。24年11月からは光和コンピューターが単独でサービスを提供している。現在の導入企業は累計72社、引き合いも入れれば160社を超える。
同システムは電子書籍の「売上管理」「印税計算」「支払処理」の3機能を柱とし、クラウド上のシステムをブラウザから利用できる。電子書店や電子取次から提供される売上報告データを取り込み、売上集計から契約条件に基づく印税計算、支払処理までを一連の流れで管理できる。
今後は、電子書籍分野で蓄積してきた売上データの取り込みや、複雑な契約条件に対応するマスタ設計、印税・支払計算の仕組みを、映像化や商品化、海外展開、ライセンス販売などのIP関連ビジネスにも応用していく考えだ。
電子出版市場拡大が開発の契機
開発の契機となったのは、電子出版市場が拡大し始めた17年頃の状況だった。出版社が電子書店や電子取次から受け取る月次の売上報告データは、事業者ごとにフォーマットが異なる。そのため従来は、各社から提供されるデータをエクセルなどで加工したうえで、自社システムに取り込む作業が必要だった。
さらに、電子書籍ではキャンペーンによる値引き、1話単位の「話売り」、読み放題など、販売形態が多様化している。同じタイトルでも販売時期や販路によって価格や計算条件が異なるケースがあり、売上集計は複雑になりやすい。
印税計算も出版社にとって大きな負担となっていた。電子書籍はデータ商品であるため、紙の書籍のような品切れや絶版が基本的になく、少額の売上でも印税支払いが発生する。また、契約条件はタイトルや権利者ごとに異なる。
専門書・学術書では共著者が多数に及ぶケースがあるほか、コミックでは連載途中で著者が交代したり、新たな著者が加わったりすることもある。印税率や支払先、対象期間などを個別に管理する必要があり、担当者の作業負担は大きかった。
「PUBNAVI」はこうした課題に対応するため、電子書籍の売上集計から印税計算、支払処理までを一元化するシステムとして開発された。
73のフォーマットに対応
売上管理では、電子取次や電子書店など73パターンの売上報告データに対応。事業者ごとに異なる形式のデータを取り込むことができ、未対応の販路についても販路マスタを編集することで追加できる。
取り込んだ売上データは構造化して蓄積され、レポートとして可視化できる。売上の集計にとどまらず、蓄積したデータを販売分析に活用できる点も特徴だ。
印税計算では、著者との契約情報を基に、タイトル、支払先、掲載期間、費目などの条件を設定。1話単位の販売や読み放題、キャンペーン価格など、電子書籍特有の販売形態にも対応。印税計算マスタに契約条件を登録することで、売上集計から著者への支払額の算出までを自動化できる。
支払処理では、印税に加えて、原稿料やデザイン料などの編集・制作関連費用、前払金の精算などにも対応する。支払区分マスタには任意の項目を登録できる。
支払通知書や支払調書、印税明細などの帳票は、テンプレートを利用して表示項目をカスタマイズできる。書籍名と印税額のみを表示するといった簡略化にも対応するほか、PDF化した帳票をメールで送付することも可能だ。
また、全銀フォーマットに対応しているため、対応するインターネットバンキングであれば、システムから出力したデータを取り込んで支払い処理を行うこともできる。
オーディオ、PODなど商品区分の管理設定可能に
26年3月には、支払登録機能と商品区分マスタを追加するなど、管理対象の拡張を見据えた機能強化を行った。

音声、POD、ライセンスなども加わった商品マスタの画面
支払登録機能では、「刷数」「率」「備考」の入力欄を追加するとともに、「支払額(税抜)」を直接入力できるようにした。支払額を入力しない場合は、「数量×単価×率」で自動計算した金額を登録することもできる。
商品マスタでは、新たに「商品区分」を設定できるようにした。初期設定として「電子書籍」「紙書籍」「オーディオブック」「プリントオンデマンド」「版権使用料」「ライセンス商品」「ソフトウェア使用料」の7区分を用意。利用企業側で削除・編集することもできる。
商品区分を電子書籍に限定せず、紙書籍やオーディオブック、プリントオンデマンド、版権・ライセンス関連まで広げたことで、出版物の販売だけでなく、コンテンツや権利に関連して発生するさまざまな取引を管理できる基盤へと機能を拡張している。
クラウド型で導入・運用の負担軽減
「PUBNAVI」はクラウド型サービスとして提供しているため、自社でシステムを構築する場合と比較して初期投資を抑えられるほか、システムの維持・管理を光和コンピューターに任せることができる。法改正などに伴うシステム変更についても、光和コンピューターが対応する。また、ユーザーからの要望を踏まえ、機能追加や改修を継続している。
すべての機能を一度に導入する必要はなく、印税計算だけを先行して導入するなど、既存システムや業務状況に応じた段階的な導入も可能。各機能のデータをエクセル形式で出力できるため、既存システムとの連携や独自の分析にも活用できる。
料金は直近1年間の各販路からの電子書籍の入金額を基準として設定。年間入金額1000万円未満の場合は月額1万8000円から利用でき、1年または半年単位の前払いとなる。導入時には別途5万円の初期設定費用が必要となる。導入前の無料トライアルも用意している。
導入72社、業務効率化を評価
22年のサービス開始から約4年。現在の導入企業は累計72社、引き合いは160社を超えている。利用企業からは、特に売上報告データの取り込みに関する評価が高いという。従来は担当者が手作業で計算していた企業も多く、「計算するたびに数字が合わなかったが、現在は安定して処理できる」「1週間かかっていた作業が2~3日で済むようになった」といった声が寄せられている。
また、印税計算の途中で別の業務に移る場合でも、作業を中断して後から再開できるため、複数の業務を並行して進められる点も利点となっている。
クラウド上で提供する特性を生かし、導入後も機能強化を続けている。現在は年に数回のアップデートを実施し、ユーザーから寄せられた要望を機能開発に反映している。26年3月の支払登録機能や商品区分マスタの追加も、利用企業のニーズを踏まえた機能強化の一環だ。今後は売上管理機能をさらに発展させ、BIツールとの連携による分析機能の強化も予定している。
こうした継続的な機能拡張によって、同システムは電子書籍の売上・印税管理にとどまらず、より幅広いコンテンツや権利収益を扱うための基盤へと進化しつつある。
電子書籍からIPへ
同社が次の展開として見据えているのが、電子書籍分野で培った仕組みを活用したIPビジネスの収益管理だ。コミックやライトノベルなどを起点としたコンテンツビジネスでは、映像化、キャラクター商品化、海外配信、ライセンス販売など、IPの展開先が広がっている。
一方、IPビジネスでは、権利者や契約先、利用期間、販路などの条件が案件ごとに異なる。複数の権利者が関わる場合には、二次利用料やライセンス収入を契約条件に応じて分配する必要もあり、収益管理は電子書籍以上に複雑になる。
同社では、電子書籍向けに培ってきた柔軟なマスタ設計や売上データの取り込み、印税・支払計算の仕組みを、こうしたIP関連ビジネスにも応用する考えだ。想定するのは、二次利用によって発生する収入の管理、複数の権利者への分配、ライセンス契約に基づく支払処理など。電子書籍の「売上・印税管理」から、コンテンツが生み出すさまざまな収益と権利関係を扱う「IPマネジメント」へと、サービスの領域を広げていく。
今年3月の商品区分マスタの拡張も、その方向性を示すものだ。電子書籍だけでなく、紙書籍、オーディオブック、プリントオンデマンド、版権使用料、ライセンス商品、ソフトウェア使用料まで商品区分として管理できるようにしたことで、コンテンツの販売形態や収益源の多様化に対応する。
電子出版市場の拡大を背景に誕生した「PUBNAVI」は、これまで出版社の売上集計や印税計算、支払業務の効率化を支えてきた。今後、コンテンツの二次利用や海外展開など、IPを軸としたビジネスが広がるなかで、売上・権利・支払に関する情報を一元管理し、蓄積したデータを事業戦略に活用するニーズはさらに高まるとみられる。
株式会社ひつじぐも 「PUBNAVI」導入で売上データ一元管理
女性向け音声作品を中心に、ゲームシナリオや漫画原作などの企画・制作を手掛ける株式会社ひつじぐもは、光和コンピューターのコンテンツ管理システム「PUBNAVI」を導入し、売上データの一元管理と業務効率化を進めている。出版社を主な対象として開発されたシステムだが、音声などIPビジネスを展開する企業にも導入が広がっている。

同社のWebサイト
主力は没入感ある「シチュエーションボイス」
同社は2010年12月に設立。ゲームシナリオやドラマCD音声作品、漫画原作などの企画やシナリオ制作を行っている。このうち、音声事業が売上高の7〜9割を占め、顧客の96%が女性だ。
主力事業の「シチュエーションボイス」は、人間の頭部を模したダミーヘッドマイクを用いて収録することで、距離感・方角を耳で感じ取り、登場人物になったような没入感を得られる。
複数キャラクターによる連作展開が同社の強みで、配信プラットフォームと直接取引することでセールやキャンペーンなど販売施策を迅速に打てる点も特徴だ。

「勇者パーティから聖女を救ったのは魔王様でした」

「キャバレーと角砂糖 ー1950ー ジョン・カワグチ」
販売はデジタル配信が主流で、現在は売上の約7割を占める。配信先は「DLsite」(エイシス)や「ポケットドラマCD」(アニメイト)、「ラブカル」(DMM.com)などの配信プラットフォームだ。
複数PF対応でシステム化検討
同社は以前、各プラットフォームから提供されるCSVやエクセルの売上データをスプレッドシートに転記するなど手作業で管理していた。しかし税込表示の有無や品番の欠落など、プラットフォームごとに表記ルールが異なるため、データの形式をそろえる作業や照合に時間がかかっていた。
代表取締役社長の島田類氏は「プラットフォームごとに表記ルールがばらばらで、作業に時間がかかり、後でミスが見つかったりすることがありました」と振り返る。加えて、漫画の音声化やメディア展開に伴い作家へのロイヤルティー支払いが発生するようになったことで印税計算の煩雑さも加わった。そこでシステム導入を考えるようになった。
情報収集を始め、複数社に問い合わせて比較検討。「PUBNAVI」であれば実現したいことに対応できると判断し導入を決定。24年12月に稼働した。
手厚いサポートが定着を後押し
導入にあたっては、データ移行や新システムへの切り替え作業に手間がかかったというが、島田氏は「移行にあたっては、作業を細分化し、一つずつ確認しながら運用を整えました。光和さんからも手厚くサポートしていただけました」と話す。
光和コンピューターが画面共有によるオンラインサポートやメールでの問い合わせ対応も継続的に実施したことが、定着の後押しになったという。
導入後は、登録業務のルール化・ルーチン化が進んだ。月末の締め処理では、必要なデータのみをスプレッドシートに書き出す運用が定着し、約200種類に上る商品の売上や価格データを一括ダウンロードできるようになった。併せて過去データも取り込んだことで、価格や割引率と売上の関係を示す実測値が蓄積され、セールやキャンペーンの効果を見通しやすくなったという。
日常的にはシステムの存在を意識しない程度に業務へ溶け込んでおり、多くの商品を抱えるなかで必要なデータだけを取り出せる利便性は大きい。
島田氏は現状の機能に大きな不満はないとしつつ、今後の要望として、割引率に応じた売上予測機能があれば便利だとの考えを示す。また、現在はダウンロードしたデータをスプレッドシートに取り込んでいるが、クラウド会計ソフトとのAPI連携によってリアルタイムに近い形でデータを反映できれば利便性が高まるとの期待も語った。
株式会社ひつじぐも
代表者:島田類
所在地:180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-2-3 藤野ビル401
株式会社光和コンピューター
代表者:寺川光男
所在地:〒101-0032東京都千代田区岩本町3-1-2 岩本町東洋ビル5階
【問い合わせ先】
電話:03-3865-1981(担当:石橋、若井)
