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ネオページは香港の投資会社が30億円を出資し、2024年3月に創業した新興の小説投稿プラットフォーム「ネオページ」を運営する企業だ。オーナーのイヴァン・ロウ会長は、小説投稿プラットフォーム事業の立ち上げを通じて中華圏で成功を収め、その経験をもとに現在のグローバル展開を牽引している。
中国のサービスはすでに別会社に売却しているが、当時培ったスキルやノウハウ、メソッドを日本国内でローカライズするとともに、日本と中華圏、さらには欧米諸国も視野に入れた、IPを軸としたビジネス拡大を目的にネオページを創業した。
今回は、創業者でありグローバル戦略を主導するロウ会長と、日本国内でのプロモーションおよびマーケティングを統括する川端康寛氏に話を聞いた。
中国の小説投稿サイトは総合デパート
中華圏における、ネット小説や電子書籍などの売上を含む「デジタル読書市場」は、急速に伸びているという。ロウ会長は、4月23日の「世界読書デー」に合わせて中国政府が発表した24年の「デジタル読書市場」において、661億4100万元(約1兆4000億円)と前年対比で16.65%増となっていることを示したうえで、その内訳について説明。「デジタル読書市場のうち『ネット文学+電子書籍』、つまりWEB小説を含むテキスト系コンテンツが約68%を占めており、中華圏におけるその市場性の高さを示している」と話す。

中国のデジタル読書市場の推移
さらにロウ会長は、「中国の小説投稿プラットフォームは総合デパートのようで、ライトノベルだけではなく、文学や詩歌などオーバージャンルで作品がアップされている」とし、一方で日本国内のWEB小説の市場がいわゆる「異世界もの」に偏っており、そのジャンルにおいては成熟しているものの、その他の小説ジャンル、特に女性向けの恋愛小説やBL小説などにおいては、中華圏の市場と比較して未成熟だと指摘する。
「〝異世界もの〟に加え、中華圏では『女性向けの恋愛小説』や『BL小説』のジャンルにおいても市場が大きい。一方、日本国内ではこれらがビジュアルを重視するジャンルであるため、どうしてもコミック市場にクリエイターが流れてしまっている。コミックと比較しても、市場規模はまだ小さく、WEB小説においてはアニメ化など、書籍化だけではないマネタイズをすることも可能であるはずで、そこに取り組めていないというのが実情」と日本国内市場について語る。

ロウ会長
他メディアで好評なジャンル
ロウ会長が語る「女性向けの恋愛小説」とは、境遇に恵まれない女性や平凡な女性が、資産家や容姿端麗などハイスペックな男性に恋をするといった物語構成で、川端氏は「BL同様、日本国内でもコミックやショートドラマでは人気の高いジャンルだが、WEB小説では作品数も少なく、マーケットはまだまだ小さい。ユーザーの嗜好としてはニーズがあるにもかかわらず、ユーザーに対しWEB小説のコンテンツを提供できていない」と話す。
一方、「ネオページ」上では、1作品で累計100万円を売り上げた「女性向けの恋愛小説」作品もあり、同社による新ジャンルへの参入・開拓は市場を創出し、拡大しつつある。
同社はこれらのジャンルを手掛けるクリエイターの分母を増やすことで、市場のさらなる拡大を図る。その施策のひとつが、同社が他社との差別化として挙げる「編集伴走型」モデルだ。
他社プラットフォーマーは広告モデルによる収益の一部をクリエイターに還元するモデルだが、ネオページは契約した作家にはデビュー前から編集担当が付き、原稿料を支払い、加えて初期段階から執筆のアドバイスだけではなく、プロモーションやマーケティングなどの支援も行う。
すでに400人の契約作家を抱えており、30億円の出資額のうち、25年10月時点で総額1億円の原稿料を支払っているという。
誰もが気負わずに投稿できる仕組み
川端氏は「原稿料を支払うことで創作に専念していただく環境を提供することが目的」とし、「編集にとどまらず、コンサルタントとしてフォローアップし、IPビジネスやイベント事業など総合的に作家をプロデュースすることが当社の強みであり特徴」と話す。
その一方でフォロワー数やファン数が少なく、現状ではバリューのない作家の卵に対するケアに余念がないのもネオページの特徴だ。契約作家への原稿料やマルチメディア化による収益を作家に還元するモデルだけでなく、小規模であってもイベントやオフ会、さらに単話での販売による収益化など、作品を投稿することでクリエイターとして少額ながら収益を上げられるサービスを提供することを主眼に置き、誰でも気軽にクリエイターになれることを目指す。
その証左として同社は 「ネオページ」を〝進化するプラットフォーム〟と位置付け、「誰でも作家になれる」ことをコンセプトに掲げる。作家や読者・ファン、さらには作家同士がコミュニティを形成することで、読者が作家を目指す土壌を築くことも視野に入れている。
同社は現在、主婦層に注目し、新人作家の発掘に注力しているという。川端氏は「個人的な日常の出来事や、自身が抱えている憧憬や欲求をインスタグラム等のSNSを通じて発信している層で、彼女らがつづるテキストは創造性があり、マーケットとして大きい『女性向けの恋愛小説』として、商業作品になりうるポテンシャルを持っている」としたうえで、同様の理由で男女を問わず中高生の小説投稿にも期待を示し、「学生時代にケータイ小説などを経た主婦層や、その子どもたちは、新しい作家予備軍となりうる」と話す。
このほか、作家支援施策として「ギフト」と称する、いわゆるユーザーによる投げ銭機能も実装しており、将来的にはアプリ内だけではなく、ブラウザ上でも有料課金できる仕組みにする予定で、よりユーザーが参加しやすいシステム構築を進めている。

アニメイトでクロスメディア担当の経験もある川端氏
全ジャンルを網羅するプラットフォームに
同社は現在、「異世界もの」「女性向けの恋愛小説」「BL小説」を軸に展開しつつ、将来的には社会的地位や性別・年齢を問わず、発信をしたいと思うクリエイターの卵が参加しやすい、全ジャンルを網羅する投稿プラットフォームを目指すとしている。
すでに複数の出版社と契約しており、ネオページに投稿された作品が書籍化・コミカライズされる予定だ。川端氏は「出版社とはパートナーとして、多くの社と協業し、来年以降より増やしていきたい」と語る。
一方、次の一手としてショートドラマや音声メディアの書籍化事業にも着手するという。「出版コンテンツ以外で人気を博している作品は、一定数のファンが付いている。IPというと出版からメディア化という発想になりがちだが、すでに活況な市場から出版に還元する流れも創出していく。そういったことも出版各社と協業して実施していく」と先を見据える。さらに「今後は出版業界にとどまらず、教育機関や自治体などとも連携し、地域文化・防災・観光など社会的テーマと連動した創作支援を進める構想もある」と語る。
加えて同社の強みでもある海外市場への参入については、中華圏にとどまらず、欧米での展開も視野に入れており、同社は各国の市場を相互に活性化させる「海外ヒットメソッドを軸にした創作循環モデル」を掲げる。
中国をはじめとした知見や方法論を日本国内の作家やクリエイターに落とし込むことで、国内市場を活性化。さらにそのIPを海外市場に提供し、そこで得たマーケティング情報や成功事例を国内作家にフィードバックする。この循環する創作モデルを続けることで、海外マーケットを拡大する意向だ。
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国境を越えた「物語の交差点」目指す
ロウ会長は日本国内の出版社が海外に進出するにあたり、まずは海外市場やその情報の把握をすることが前提としたうえで、「当社は海外市場における情報や、国によって異なるプロモーション施策などを提供できるメソッドがある」とし、「当社が掲げるグローバル育成は、国内外の優れた作品を各国に紹介することのできるプラットフォームを目指している。各国の作品を多言語に翻訳し、ユーザーに提供すること、各クリエイターが相互に刺激し合い、良質なコンテンツを創出することなど、その環境整備こそが当社のミッションだと思っている。それは国境を越えた〝物語の交差点〟だ。それこそが、われわれが目指すゴール」と展望を語った。
◆「ネオページ」各サイトは下記から
株式会社ネオページ
代表者:小川傑子
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