大宅賞に2作品 鈴木忠平『嫌われた監督』、樋田毅『彼は早稲田で死んだ』

2022年5月18日

 日本文学振興会はこのほど、第53回大宅壮一ノンフィクション賞に鈴木忠平氏『嫌われた監督落合博満は中日をどう変えたのか』(文藝春秋)と樋田毅氏『彼は早稲田で死んだ大学構内リンチ殺人事件の永遠』(文藝春秋)の2作を選出した。

 

 

 

 『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』は、中日ドラゴンズで監督を務め、ペナントレースではAクラスに入り、日本シリーズに5度進出、2007年には日本一に輝きながら、フロントや野球ファン、マスコミから厳しい目線を浴び続けた落合博満氏に、著者が1対1の取材を行い、福留孝介、川崎憲次郎、和田一浩、森野将彦ら影響を受けた12人の証言から名将の実像に迫った作品。ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞作。

 

 『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』は、1972年に早稲田大学第一文学部二年生の川口大三郎さんが、革マル派の活動家にリンチを受け殺害された事件をきっかけに組織された一般学生による新自治会の委員長に就いた著者が、学生時代から抱き続けた「不条理な暴力に人はどう抗いうるのか」という問いに挑み、当時の革マル派幹部や川口さん殺害に加わった実行犯など50人以上の関係者を取材した作品。

 

 鈴木氏は1977年生まれ。名古屋外国語大学卒。日刊スポーツ新聞社、「SportsGraphicNumber」編集部を経てフリーに。作品に『清原和博への告白甲子園13本塁打の真実』(文春文庫)、構成を担当した作品に『清原和博告白』(清原和博、文春文庫)、『薬物依存症』(清原和博、文藝春秋)。

 

 樋田氏は1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。朝日新聞社の大阪社会部で同社阪神支局襲撃事件取材班のキャップとして『新聞社襲撃テロリズムと対峙した15年』(岩波書店刊)をまとめた。大阪秘書役を務めた後、2017年に退職。18年『記者襲撃赤報隊事件30年目の真実』を発表し、本格的な執筆活動に入る。作品に『記者襲撃赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)、『発達障害食事・栄養・キレーション療法をご存じですか?』(ウェイツ)、『最後の社主朝日新聞が秘封した「御影の令嬢」へのレクイエム』(講談社)。

 

 受賞にあたり鈴木氏は「受賞に際しましてはまず、駆け出しの記者だった私に多大なものを与えてくださった当時の落合博満監督とご家族、中日球団関係者の皆様、日刊スポーツ新聞社の諸先輩方、本書に携わっていただいた方々に心より感謝申し上げます。私が書いたのは世の中と隔絶した人物のほんの一面に過ぎませんが、あの頃の鮮烈な体験をこれからの人生でも大切にしていきたいと思います」と、樋田氏は「長い間、胸の奥に溜めていた思いをまとめた作品で、憧れの賞をいただけることになり、感無量です。半世紀前、早稲田のキャンパスで吹き荒れた政治セクトの暴力に抗い、闘った仲間たちと喜びを分かち合います」とのコメントを発表した。