【本屋月評】「サン・ジョルディの日」(Readin' Writin' BOOK STORE・落合博)

2022年5月12日

 「#元書店員が埼玉県のどこかで100日後に本屋を開業する物語」というハッシュタグをつけたツイートをチェックするのが楽しみだった。

 

 準備状況などを逐一公開して興味と関心を持ってもらうだけでなく、「100年後に残したい本」「とびっきりなラブストーリー」「人生に寄りそう哲学書」「涙が出るほど笑った本」「家にこもって読みたい長編小説」「お腹が空いてくる本」など仕入れに参考となりそうな情報を集めていた。

 

 そして、最初のツイート(1月13日)から100日後の4月23日、本屋はJR高崎線北本駅から徒歩数分、北本市役所に近い住宅地にオープンした。屋号は「小声書房」という。当日、1階では書籍販売と豆本制作のワークショップ、2階のイベントスペースでは13組15人が参加した一箱古本市を開催した。この時点でツイッター(@kogoeshobo)のフォロワー数は3000を超えていた(現在は4000超)。

 

 店主の橋爪文哉さん(32)とは数年前、ツイッターを通して知り合い、僕の店で毎月開催しているお座敷一箱古本市にも何度か出店してくれていた。屋号の通り、穏やかな人柄が話し方ににじみ出ている。

 

 東京メトロ銀座線田原町近くで僕が本屋を始めた5年前の2017年4月23日、橋爪さんも店舗を持たない本屋として活動を開始していた。30歳以上の年齢の開きがあり、歩んできた道のりは違っていても、僕たちは本屋の同期生なのだ。

 

 4月23日はスペイン・カタルーニャ地方の祝祭日「サン・ジョルディの日」。大切な人に本とバラを贈るという日で、本屋を始めるのにこれ以上の日はないだろう。書店勤務の経験がある橋爪さんはもちろん知っていて選んだそうだが、僕の理由は小声になってしまう。ゴールデンウイーク前の土曜日だった4月22日に始めようと考えていたら、その日が仏滅だったので翌日にしたというわけ。

 

 内装工事などが終わってないため、小声書房の本格オープンは7月になる。橋爪さんは「何度でも足を運んでもらえるような場を作ることを目標としている。3年後、5年後、10年後を見据えた運営を行っており、どのような本屋になるか自分でも楽しみです」と話している。

 

 同じ日に生まれた本屋として僕も(10年後は無理だが)3年後、5年後を見据えて歩んでいきたい。

 

4月23日の5周年では店内でマリンバ演奏をしてもらった

 

バックナンバー:本屋月評(落合博)
▼第1回(1月20日掲載)「低く、長く、遠く」
▼第2回(2月17日掲載)「おススメは鰹節」
▼第3回(3月17日掲載)「書いた、走った、飲んだ」
▼第4回(4月14日掲載)「ガラスの下駄」を履いていた
▼第5回(5月12日掲載)サン・ジョルディの日

 

落合 博(おちあい・ひろし)  ©chloe

 1958年山梨県甲府市生まれ。「Readin’Writin’BOOKSTORE」店主兼従業員。東京外国語大学イタリア語学科卒。読売新聞大阪本社、ランナーズ(現アールビーズ)を経て、90年毎日新聞社入社。主にスポーツを取材。論説委員(スポーツ・体育担当)を最後に2017年3月退社。著書に『新聞記者、本屋になる 』(光文社新書)などがある。

 

〈店舗情報〉Readin' Writin' BOOK STORE(リーディンライティン ブックストア)
 住所:東京都台東区寿2丁目4−7
 HPhttp://readinwritin.net/
 Twitter:https://twitter.com/ochimira?s=20
 営業時間:12:00~17:30(火・金17:00、土・日18:00)/定休日は月曜日