【書店員の目 図書館員の目】the show must go on(菊池壮一)

2022年2月18日

 ワハハ本舗の全体公演「花と花魁」が昨年10月末から12月末まで、4年ぶりに全国を回った。

 

 ワハハの本公演と言えば、久本雅美、柴田理恵、梅垣義明、ポカスカジャン達を先頭に、歌あり芝居あり、ダンスとコントも盛りだくさんという非常に楽しい舞台である。私はリブロ時代からワハハのメンバーの出版プロデュースをさせていただいている関係で、彼らをずっと応援している。今回も東京公演の初日に観に行かせてもらった。

 

 いつもは会場に入ると、劇団員たちが歌や踊りで迎えてくれるのだが、コロナに配慮してそれはなし。キャラクターグッズや著書の販売も遠慮がちに実施されていた。座席も一人おきでどうなることかと思っていたが、主宰の喰始の挨拶から順調にスタート。いつも以上に楽しいステージが始まった。

 

 しばらくすると、泣いている自分に気がついた。周りを見まわすとほとんどの人が目頭を押さえながら観ている。久々に生を観ることができるうれしさ、楽しそうに精いっぱい動いている劇団員の姿に皆感動しているのだ。コロナの自粛期間中ネット配信をいくつか観たが、やはりライブは素晴らしい、比べ物にならないと感じた。

 

 同時期、コロナが小康状態だったので、日比谷カレッジ(講座)も臨場感が伝わるものを行いたいと思っていた。12月4日に日比谷図書文化館大ホールで実施した「半藤一利『焼けあとのちかい』に学ぶ」である。12月8日の太平洋戦争開戦日を前に、昨年1月亡くなった半藤一利の遺書と言っていい反戦絵本『焼けあとのちかい』の朗読をしようというもの。 

 

 絵を担当した塚本やすし、編集担当の藤代勇人と私がMCと朗読。青山学院大で音楽を教えている村山祐季子がBGMの作曲と演奏、スウィッチャーに共通の友人の書店員大久保和江というメンバーで「絵本で戦争を語り継ぐ会」を結成して臨んだ。半藤の絵本は文章が長く普通に読んでも20分以上かかる。ただ、だらだらと朗読しても来場者の共感を得られないだろうと意見が一致し、要所要所で朗読をストップさせて音楽をメインにしたり、我々が親やその前の世代から伝え聞く戦争の話を鼎談する時間を入れるなどして、音楽劇のように仕上げてみた。参加者アンケートには93%の人が「大満足」と答えてくださり、我々も自信を持つことができた。 

 

 今回は大人向けの朗読会だったが、「子供向けの読み聞かせ会にも応用できるのでは」に応えてくれたのがやはりワハハ本舗若手の5人(星川桂、雨宮あさひ、鈴木千琴、噛家坊、吉川元祥)であった。 

 

 1月10日、日比谷図書文化館の小ホールで、児童書に強い千代田図書館と四番町図書館と3館共催という形で開催。スタートから出囃子でMCが登場し、いきなり会場が沸く。その後もえほんや紙芝居を読む合間に、お正月らしく獅子舞の芸や、指遊び、歌、子供も一緒に踊れるダンス等を展開し大喝采。アンケートも100%「また来たい」であった。 

 

 その後オミクロン株が大暴れ。ふたたびライブ系は自粛ムードに。知人のミュージシャンのコンサートも続々と中止となり、日比谷の催し物も様子を見ている状態だが、この年末年始でライブの大切さが身にしみた。図書館も漫然と文化的な講座を行っている場合ではあるまい。アフターオミクロン、平穏な世の中になってくれることを祈っているが、その時再びニューリアルを提示・提案できるよう精進を続けたいと思っている。 

 

 「the show must go on!」である。

 

菊池壮一 日比谷図書館文化館・元リブロ