新聞業界2020年重大ニュース 新型コロナ感染拡大、新聞社・販売店の経営などに影響

2020年12月25日

 2020年の世相を表す漢字は「密」――。「『現代用語の基礎知識』選2020ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞も「3密」だった。この1年はやはり、新聞業界も新型コロナウイルスの感染拡大に振り回された1年となった。小・中・高校の一斉休校、東京五輪・パラリンピックの延期、緊急事態宣言発令、「GoTo」事業など。そして、年が変わっても、コロナ禍はまだ続く。「文化通信」編集部がピックアップした新聞業界の重大ニュースによって、激動のこの1年を振り返ってみたい。

 

〈重大ニュース 出版業界〉

 ・「出版業界2020年重大ニュース コロナ禍に揺れた1年」

 

【文化通信 編集部】

 


 

①新型コロナ感染拡大 正確で信頼できる情報届け続ける

ライブ配信されたNIE全国大会でのシンポジウム

 

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相(当時)は4月7日、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく初めての「緊急事態宣言」を7都府県に出し、同16日にその対象を全国に拡大した。新聞やテレビ・ラジオなどは、国民生活に欠かせないとして、事業継続が必要な業種と位置づけられた。

 

 新聞各社は、正確な情報を届け続ける重要性を読者に訴えた。その一方、出社人数の抑制を全部門に呼びかけたり、在宅勤務や時差通勤などで感染予防対策を実施。その取り組みはコロナ禍でさらに進んでいる。

 

 新聞業界などのイベントにも大きな影響を及ぼした。5月に福島県郡山市で開催予定だった大会もライブ配信などに変わった。いずれも、ネット配信は大会史上初めて。また、9月に予定されていた「第14回全国新聞販売フォーラム2020岡山」も1年程度延期となった。

 

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②夕刊を休刊する地方紙が相次ぐ

 

 朝夕刊を発行している地方紙で、今年で夕刊の発行を止めることにした新聞社が相次いだ。大分合同新聞社、徳島新聞社、東奥日報社、山陽新聞社、高知新聞社がそれぞれ社告などで発表した。

 

 東奥日報社は9月から夕刊を休刊した。社告では「新聞製作にかかる原材料費や輸送コストが上昇し、広告も減少するなど新聞販売を取り巻く環境は悪化を続けている。本紙各販売店でも、配達員不足が深刻さを増し、人件費がアップする一方、少子高齢化と人口減少で購読者も減少している」と説明。さらに、「消費税増税や新型コロナウイルスの影響で、折込広告が激減するなど販売店経営を圧迫している」と理由を挙げた。

 

 そのほかの各社も、戸別配達網の維持などを理由としている。

 

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③新聞大会で「コロナ禍」の経営課題など議論

第73回新聞大会の研究座談会

 

 日本新聞協会の第73回新聞大会は11月に神戸市で開かれ、コロナ禍で信頼性の高い情報が求められる今こそ、正確で公正な報道を通じ「国民の安心・安全な生活に寄与し、公共的な使命を果たす」との決議を採択した。

 

 研究座談会は「コロナ禍と新聞編集、新聞経営上の課題」をテーマに議論。編集面では、新型コロナ感染者や医療従事者らへの差別や偏見を巡り、専門家との意見交換や日本民間放送連盟との共同声明などを通じ、報道側の姿勢を示していることや、各紙の取り組みなどが紹介された。

 

 経営面でも、戸別配達網を維持するために新聞販売所の経営を支援することの重要性や、デジタル技術を駆使した収益力の強化策をめぐって意見交換。この危機を乗り越えるため、業界全体の連携を深めることを確認した。

 

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④購読料改定する地方紙、地域紙増える

 

 20年も新聞の購読料を改定する地方紙、地域紙が相次いだ。

 

 中国新聞、山陽新聞、静岡新聞、中日新聞、岐阜新聞、北海道新聞、熊本日日新聞など。2度の消費増税時を除いて、約四半世紀ぶりに本体価格を値上げした新聞が多かった。

 

 中日新聞社は10月1日から、中日新聞の月決め購読料(朝夕刊セット)を、それまでの4037円(税込み)から363円引き上げ、4400円(本体価格4074円、消費税326円)に改定した。

 

 購読料の本体価格の改定は1994年2月以来、26年ぶり。社告では「新聞社と新聞販売店はさまざまな経費節減に努め価格を据え置いてきたが、新聞製作に関わる経費と流通経費は上昇し、新聞発行ならびに戸別配達網を維持することが大変厳しい状況となっている」と読者に理解を求めた。

 


 

⑤新型コロナで折込広告激減、新聞販売店の経営を直撃

新型コロナウイルスの影響に関する緊急アンケート

 

 日本新聞折込広告業協会(J-NOA)によると、20年上半期の全国の折込広告動向は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、3月が前年同期比25.9%減、4月が同52.6%減、5月が同59.4%減と大きく減少した。6月は270.9枚で30.3%減だった。

 

 折込広告が激減する中で、新聞販売店の全国組織である日本新聞販売協会(日販協)は8月、加盟する販売店に聞いた「新型コロナウイルスの影響に関する緊急アンケート」の結果を発表した。

 

 それによると、「お店の状況はいかがですか」という問いには、回答数1342件のうち97.6%が「悪くなっている」と回答。

 

 「販売店の経営状況」については、「廃業をすでに考えている」と答えたのが12.4%。「苦しい」の21.7%、「大変苦しい」の34.5%、「近いうちに困難になるだろう」の24.5%を合わせて93.1%と、状況がかなり悪化していることが示された。

 

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