新潮文芸振興会 「三島賞」に宇佐見氏、「山周賞」は早見氏が受賞

2020年11月17日

受賞した早見和真さん(左)と宇 佐見りんさん

 

 新潮文芸振興会はこのほど、第33回「三島由紀夫賞」に宇佐見りん著『かか』(河出書房新社)を、第33回「山本周五郎賞」に早見和真著『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮社)を選出した。11月5日、東京・港区のオークラ東京で贈呈式を開いた。

 

 まず、「三島由紀夫賞」の選考委員を代表し登壇した中村文則氏は、文体とテーマの両方が「見事に一致している、本当に素晴らしい小説」と評価。

 

 宇佐見氏の受賞についても、「然るべき作品を書いた然るべき作家に、然るべき賞をきちんと受賞していただく。それこそが、文学界の中だけにとどまらず、広く社会を巻き込むことになる。それが文学の活性化につながる」と話した。「宇佐見さんの今後には期待しかない」とエールを送った。

 

 激励を受けた宇佐見氏は、『かか』で文藝賞に応募したのは2年前、19歳の時だったと振り返り、「誰かに読んでほしくて、声を届けたくて、書いていたような気がする」と語った。

 

 また、2年前に熊野を取材した際、奈良にも足をのばして興福寺の阿修羅像に会ってきたとし、見るのが3度目だったその時、初めてメガネをかけて見つめ、指の欠損に気がついたという。

 

 宇佐見氏は「私が今まで見てきたものはなんだったんだろう」と語り、「見えなかったものが見えるようになり、書くものも変わっていく。同時に、視野が広がれば失われる、確かに熱をもって存在していたものが本作には詰まっている」と話した。最後に、「これからも地道に書いていきたい」と決意を表した。

 

 一方、「山本周五郎賞」の選考委員の代表として江國香織氏が登壇。授賞作の魅力を「読まないとわからない面白さがある。地味だが、誠実にひたむきに書かれており、読むとじわじわと胸が熱くなる」と語った。

 

 『ザ・ロイヤルファミリー』では、馬主一家を中心に競馬の世界を描いている。早見氏は「競馬の世界と文芸の世界、どちらの村の人に対してもがっかりさせないものを書こうと思っていた」という。今年1月には2019年度JRA賞馬事文化賞も受賞している。

 

 また、山本周五郎賞は「学生の頃から、候補作も含めて読み続けており、非常に思い入れがあった」という。

 

 受賞したことで、「いわゆる〝売れ線〟を意識することなく、自分の楽しいと思うことに対してもうちょっと自信を持って書いたらいいと思えるようになった」と明かした。

 

 最後に、新潮文芸振興会の佐藤隆信理事長は、両賞の選考委員10人のうち、9人が今回新しく就任したことを紹介。「フレッシュな選考だった」とあいさつした。