星新一の『ボッコちゃん』に出会ったのは小五の夏だった。言わずと知れた不朽の名作ショートショート集。奇抜なアイデアと意外な結末で、あっという間に読めるのにすこぶる面白い。次から次へと読みふけり、私はいつしか「ショートショートの神様」の虜になっていた◆デビューから60年以上経った今も星作品は版を重ね、新たな読者を魅了し続けている。長く愛されるその理由は、表現が古びないよう細部の調整(例えば「ダイヤルをまわす」→「電話をかける」)を続けたことだけではない。いつの時代も変わらない、生きることの哀しさが作品の根底に流れているからではないだろうか◆生誕百年を記念して、未収録エッセイと新発見ショートショートを収めた『きまぐれカプセル』(新潮文庫)が8月28日に発売された。読書の楽しさと奥深さを教えてくれた星新一。まさかの最新刊は夢のような贈り物だ。【尾川健】
