【出版時評】2026年6月30日付

2026年6月30日

求められる書店

 

 ブックエースが茨城県常陸太田市に開店した「TSUTAYA BOOKSTORE常陸太田」は、620坪の書店にスターバックス コーヒーや地元飲食店によるフードコートが併接された複合施設だ。同社が近年展開するモール型複合書店のスタイルだが、市の人口が4万3000人余と少ない点が特徴だ。


 この人口にもかかわらず奥野康作社長に出店を決断させた要因は、市からの支援である。賃料や店舗建設などへの支援によって、同社が同規模の店舗を開業運営するのに比べて費用を抑えることができた。それだけ、市側からの書店進出への期待が高いということでもある。


 人口減少を食い止め、移住者を呼び込もうと同市が市民に行ったアンケートでは、欲しい商業施設の1位が書店、2位がカフェだったという。


 この話には既視感がある。アメリカのニューヨーク・ブルックリンで2009年に住民の要望でオープンし注目を集めたグリーンライト・ブックストアの時も、自治体によるアンケートの1位が書店、2位はカフェだった。日本でも11年に代官山蔦屋書店が開店した時、周辺住民へのアンケートで書店が1位になったという説明だった。その後も同様の話をいくつか聞いた。


 トーハンのHONYALなどで、書店を始めたいと考える人が多いことははっきりしたが、潜在的に書店を求めている人も多いのだ。【星野渉】