【出版時評】2026年6月16日付

2026年6月16日

日韓のデジタル教科書模様

 

 デジタル教科書を正式な教科書にする改正学校教育法が6月10日に成立した。教育効果や、実際に導入する場合における学校の環境整備など、いろいろと議論されてきたが、こと出版業界にとっては、実際に教科書をつくる出版社と、教科書供給を担ってきた書店への影響が大きい。


 一方、デジタル教科書先進国といわれる韓国では、雲行きが怪しくなっている。本紙6月9日付の白源根氏による「ソウル通信57 韓国のAIデジタル教科書 導入時期先送りの顛末〈てんまつ〉」によると、同国政府はデジタル教科書に続き、AIデジタル教科書の導入を決めたものの、国民の合意を得られず、尹錫悦政権の崩壊によって、「教科書」から「教材」に格下げされたという。


 日本でも、デジタル教科書については異論もある。このまますんなり進むのかどうか、どの程度の速度と範囲で導入できるのか、はっきりしない部分もある。しかし、教科書会社としては国が決めた方針に従って制作するしかない。韓国では教科書出版社が政策転換した政府に損害賠償を求めているという。


 書店にとっては深刻だ。日本では地域の独立系書店が教科書供給を担ってきた。すべてデジタル化され、生徒に直接提供されることになれば存続の危機ですらある。事前調整を重視する日本だが、韓国の事例は他人事ではないように見える。【星野渉】