【出版時評】2026年2月3日付

2026年2月3日

「滅びの危機」を「再生の夜明け」に

 

 特別セミナー「トラック新法成立後の世界~滅びの危機か、再生の夜明けか~」を当社主催で開催した。登壇した取次協会・近藤敏貴会長は、取引条件(正味)を見直す具体例や雑誌発売日問題など、以前はタブー視された話題に踏み込んだ。


 長くこの仕事をしてきたが、公式の場で、これほど多くの関係者に向けて、このような話題が語られることは稀有なことだ。業界課題を議論する場は多かったが、特に取次関係者から取引問題に踏み込む発言はほぼ皆無だった。


 この業界に入った頃、何も知らないまま前任者について行った大手取次の社長インタビューで聞いた「取次は物言わぬことが美徳なんだ」という言葉はいまも忘れられない。その後、業界の状況がわかるにつれ、その言葉の意味を実感した。


 その頃、業界問題が語られる場では、必ずといっていいほど「取次悪玉論」が噴出した。いま思えば、子どもが親の料理に文句をつけるようなもので、盤石だった取次システムに甘えていたとしか思えない。「そんなに嫌なら取次を使わなければいいじゃないですか」と反論して、そうなったためしはなかった。


 トラック新法は業界ではどうにもならない〝黒船〟だ。外圧を、「再生の夜明け」にすることは、大昔から日本人の得意とするところ。今回の話をまじめに考えてほしい。【星野渉】