【つぶや記】2025年11月25日付

2025年11月25日

 言わずと知れた深作欣二監督のヤクザ映画の名作「仁義なき戦い」を鑑賞。深作欣二は朝まで役者を飲ませ、血走った眼のまま出演させることで、あの鬼気迫る演技を引き出したというエピソードを聞いた◆とにかく出演者のキャラクターが濃く、脇を固める面々が暑苦しい。金子信雄、松方弘樹、梅宮辰夫、田中邦衛、渡瀬恒彦、千葉真一など、胃もたれを強要する役者陣が主役を喰う。それゆえ主役の菅原文太=広能昌三は、うな重の山椒のように一粒で辛い存在感を放つ。でも、その飄々とした佇まいの裏にある、ちょうど山椒の一粒が弾けるように、時折見せる危うさは見る者を引き付ける。特にラストシーンは圧巻だ◆原作・飯干晃一氏によるノンフィクションも読んだ。広能のモデルとなった美能幸三の獄中手記をもとに書かれたもので、序文最後の9行はそれこそ山椒のように痺れる名文だ。ぜひ読んでほしい。【山口高範】