【寄稿】地域紙の未来を作る3つのアクション 若者に向き合うため「共有・連携」を あやべ市民新聞社 経営企画室長 平田佳宏氏

2022年6月20日

 地域紙の未来に明るいビジョンを描ける人はごく少数だろう。地域紙の置かれている状況は疑いの余地なく逼迫している。何らかのアクションを起こさない限り、この状況は悪化こそすれ、改善されることはない。これまでに世界中の新聞社がデジタル化に打開の道を探ったが、成功と言える事例は聞こえてこない。弊社では、これから起こすべき3つのアクションを考えているが、どれも単独では実現が難しい。この難局を乗り切るためには地域紙の連携が不可欠と考える。

 

 未来に見通しが立たない大きな原因は、①地域紙の購読層は10年後にはほとんどいない②「ニュースは無料」の意識が定着③若年層が情報の価値の軽重を判断できなくなった④インターネットでは大手の「胴元」に利益が集中し、新聞社への還元はごくわずか―といったところだ。

 

現状のサムネイル

 

15年後のサムネイル

 

 

 これは地域紙に限ったことではなく、また新聞業界に固有の課題でもないが、これらの課題をクリアできなければ新たな購読者の流入を作れず、地域紙は終焉を迎えざるを得ないだろう。そうなる前にやるべきアクションを提言したい。

 

 まず思いつくのはデジタル配信だが、前述の通り劇的な成功事例にはお目にかかったことがない。考えてみれば当然のことだ。デジタル配信は手段であって目的ではない。道具だけ作って読者が増えるわけがなく、「仏作って魂入れず」の典型である。

 

 息も絶え絶えだったラジオに、若者が再び戻ってきたのは「radiko」(ラジコ)というアプリの功績が大だが、もともとラジオは若者向けの番組作りを得意としていたため、ラジコという道具の力が最大限に発揮されたのだ。

 

 では、新聞における「魂」とは何かと言えば、「真摯に若者に向き合うこと」しかない。若年層は新聞を、「自分のためのモノ」とは考えていないのだ。それは新聞の側が、若年層に真剣に向き合ってこなかったからではないか。デジタル化で使い勝手だけを良くしても、それでは若者は見向きもしない。

 

 そこで、第一のアクションとして考えたのが「地域紙が、若者の将来の幸せを一緒になって考える」こと。閉塞感や分断ばかりが社会を覆い、物質的な価値観に翻弄されて先の見えない現在、将来に明るい希望を持っている若者がどれだけいるだろうか。そんな今、地方への移住に目を向ける若者が増えている。

 

 弊社が移住者を対象に実施したアンケートでは、「移住して収入は減ったが、幸福度は大きく上がった」という声が大勢を占めた。人との距離が近く、文化が暮らしに根づき、土に触れながら自分で作る、都会にはない暮らし。その素晴らしさを若者に伝えることは地域紙の十八番だ。

 

 移住して幸せを感じる若者が増えれば、地域も活性化し、引いては国が元気になる。全国の地域紙が連携し、行政や地元企業と組んでこれを訴え、若者を支援する長期キャンペーンを行うというのはどうだろう。

 

 第二のアクションは「メディアリテラシー」に関する啓発。現代の情報環境の危うさを理解する若者は多くない。若者に健全な情報のあり方を啓発することが急務と考える。彼らデジタル・ネイティブにとって、スマートフォンは即座に情報が得られる不可欠のツールだが、自分の頭で考えるプロセスを抜きにした「結果だけの情報」に常に満足していれば、次第に思考停止に陥る。

 

 また、情報強者による恣意的な情報操作が横行する可能性があることや、一見おおらかに見えるデジタルの世界では、もはや思想や発言の自由は保障されていないこと、さらには一次情報の重要性と意義を理解していない若年層が多いのではないか。

 

 この啓発活動を、地域紙が教育の現場と協働で推進してはどうだろうか。新聞を読むことの大切さを訴えるだけでは、「きらいなニンジンを鼻をつまんででも食べなさい」と言うのに等しい。若年層が「本気で自分たちのことを考えてくれている」と思えるアクションや、紙面作りこそが肝要だろう。

 

 このようなアクションは、地域紙が連携しなければ成し得ない。そして第一、第二のアクションを推進するために不可欠なのが第三のアクションである「アプリ等の開発」。この流れなら当然、開発も地域紙の連携で進めるのが望ましい。大切なのは地域紙自身が「胴元」になることだ。

 

 地域紙連携による「ボトムアップ」の情報発信が若者の未来に希望の灯をともせたならば、地域紙は新たな展開を迎えられるのではないだろうか。

 

 

7月18日にオンラインセミナー「ともに考える地域紙の未来」

 

 文化通信社は、全国各地で新聞を日々発行している皆さんとともに、各社がかかえる経営課題を共有し、課題解決のヒントや連携の可能性などを探るオンラインセミナー(無料)を開催します。多くの方の視聴をお待ちしております。

 

□テーマ

「次世代の購読者、若年層が共感する地域紙へ ~10年後に購読者が消える?~」

□日時

7月18日(月・祝)13時~14時30分(質疑応答あり)

□登壇者

あやべ市民新聞社 経営企画室長 平田佳宏氏

□形式 

Zoomによる双方向型オンラインセミナー

□対象

全国で新聞を発行する関係者、地域メディアに関心を持つ方(学生含む)

□お申し込み

URL=https://forms.gle/sVRyCPM8xRVZioKo9