読み継がれる名著とランキング
筑摩書房の名著『思考の整理学』が11月の重版で300万部に達する。こうした書物は一時の人気や、「商品」という枠を超えて歴史を重ねるのだろう。
同書が単行本で刊行されたのが42年前。それから24年間で文庫化もされて計16万部を発行。2007年に今も語り草になる、元さわや書店の松本大介氏による「もっと若いときに読んでいれば…」というPOPをきっかけに、筑摩書房の営業担当者が広めたことでブレイク。18年間で300万部の大台を超えることになる。
書物が作品の質と普遍性によって時代を超えるのは当然として、書店人や出版者による後押しがいかに大切なのかを改めて感じさせるエピソードだ。すぐれた作品は、手を変え、品を変えて問い続ければ、数十年はおろか、千年の時も超える。
かつて、東京国際ブックフェアに合わせて発行した弊社の特別版に、紀伊國屋書店の協力で文庫著者ランキング300位を掲載していた。トップは東野圭吾だったり池波正太郎だったりと、必ずしも時のベストセラー作家ではないのが興味深かった。たしか、外国人トップがドストエフスキーだったこともある。
部数で作品の質を測れるわけではないが、多くの人に読み継がれている記録は、出版業界人に気付きをもたらすかもしれない。そんなランキングを作ってみたい。【星野渉】
