【出版時評】2025年9月23日付

2025年9月23日

講談社がNYで自社ビル取得

 

 講談社の米国法人がニューヨークのマンハッタンで自社ビルを取得していた。2023年11月に購入し、昨年6月に出版事業を行っている講談社USAパブリッシング(KUP)が入居した。マンハッタンの不動産価格は世界でも屈指の高さだろうが、それだけ海外ビジネスが拡大しているということであろう。


 8月にニューヨークで開かれたアニメ・コミックのフェアも大盛況だったという。紀伊國屋書店の販売ブースは周囲を行列が取り囲み、数千万円を売り上げたそうだ。


 講談社が海外向けに出版活動を始めたのは1960年代初頭。60年代中盤にはニューヨーク事務所も開設した。当初は日本文化紹介などの書籍出版が中心だったが、2000年代に入り現在のKUPを設立、マンガを中心とした出版活動を本格化させた。


 ヨーロッパでは日本の小説がブームになっているというし、多様な出版物を海外に提供していく機運が高まる。11月にはこれまで有志の手で運営されてきた東京版権説明会(TRM)も業界行事として拡大される。政府の「書店活性化プラン」にも「日本の活字文化の海外展開支援」が盛り込まれた。


 そんな中で、ヨーロッパで実施が近づいている木材規制「EUDR」は気になる動きだ。紙の本の輸出に支障が出る可能性がある。ここは政府の支援もあり得るのではないか。 【星野渉】