書店が減るから書籍が売れなくなる?
弊社はこのほど、アメリカで増え続けている独立系書店を参考に、日本での書店の在り方を考えることをテーマに「第5回活字文化フォーラム」を開催したが、市場縮小によって減る書店を支えなければならない、という〝常識〟に一石を投じる内容だった。
基調講演で本紙連載中の大原ケイさんがアメリカの独立系書店の状況や、その経営者たちの思い、書店を支える業界団体などについて報告。長年、大手チェーンやアマゾンとの競合を生き抜いてきた独立系書店の人々は「闘志があり、しぶとい」と表現した。
パネリストとして登壇した文字・活字文化推進機構理事長で読売新聞グループ本社社長の山口寿一氏は、海外では書籍市場が横ばいないし拡大し、書店数が増えている国がいくつもあることから、ネットなどの影響で書籍が読まれなくなっているという考え方は「思い込み」ではないかと指摘した。
各国の書店数の増減と書籍市場の推移については、詳細に調べる必要があるが、書店の減少が書籍市場の縮小を招いているとしたら、「本が売れないから書店が減る」という〝常識〟は覆される。
日本で書店が減り続けているのは、書店が書籍を売っても食えない条件のせいだ。条件を変えて書店が増えれば書籍市場の縮小に歯止めがかかると考えれば、業界の流れも変わるかもしれない。【星野渉】