【行雲流水】2025年7月29日付

2025年7月29日

某月某日


 八坂神社の祭礼、祇園祭の前祭山鉾巡行の前日、京都に入る。
 宵山そぞろ歩きの前に、割烹「やました」へ。とりどり盛り合わせた八寸、丸芋の叩き、白ずいき胡麻酢和えのあと、たっぷり脂の乗った鱧の皮目を炭火で炙り、みょうがの千切りと山椒を乗せて二杯酢でさっぱりと食べる。香ばしい。


 ほろ酔いで蒸し暑い町に出れば、山鉾を巡る人、人、人。辿り着いたのは「放下鉾」。200年前の西陣織やペルシャ絨毯など絢爛豪華。


 翌朝の京都新聞一面は、宵山に押し寄せる人波の写真に、「『今宵限り』と懸装品巡り」とある。ケソウヒンとはなんとも美しい響きである。響きといえば写真から〝コンチキチン〟は聴こえない。紙面掲載とデジタル版の動画を繋げてみてはどうだろうか。小紙8月12日号では宮内義彦さんのインタビュー記事からナマ動画に飛ばす試みをする予定。是非ご一〝聴〟を。


 某月某日


 京都をあとにして、広島県立美術館で開催される「藤枝リュウジの世界」初日のセレモニーに。


 藤枝さんとは40年来の付き合いになる。東急の新人時代に担当した郊外型ショッピングセンターの販促で出会い、東急グループの様々なキャンペーンや沿線情報誌『SALUS』などのアートディレクションをお願いしてきた。個人的にも『味の手帖』や、当社が手掛ける冊子、『先輩の本棚』や『ボクニキミニ』、「文豪珈琲」など、何から何までお世話になっている。

 

 600点以上の作品が並ぶ会場は圧巻。主催者のひとりとしてテープカットした中国新聞社・岡畠鉄也社長も感心して見入っていた。


 某月某日


 映画「国宝」を観る。吉田修一氏の原作は、尾上菊之助(現・八代目菊五郎)が朗読するオーディオブックの前半・青春篇は読んで(聴いて?)いたが、映画は後半・花道篇が中心に構成されていて予見することなく鑑賞。しかし、菊五郎の朗読はまるで舞台が観えるようで白眉。紙の本にとって最大の脅威は電子書籍ではないのかも。


 3時間に及ぶ上映で、膀胱耐久試練に効果アリ(?)と、「ボンタンアメ」が話題とか。鹿児島のセイカ食品が発売して今年で100年。製造のヒントとなったのが、加藤清正が朝鮮出兵の折に保存食にしたことで「朝鮮飴」と呼ばれた菓子であったという。清正は食糧が尽きて馬を食べたことで熊本に馬肉食文化ももたらした。馬刺し、文旦飴、清正公はエライ!