書籍出版の欧米化が進む
講談社が出版インフラとして立ち上げたKPSホールディングスは、アメリカの大手出版社ペンギン・ランダムハウス子会社のサービスを参考にしているという。同社のサービスは書店への営業・受注から物流、回収まで出版ビジネス全般をカバーする。
アメリカでは、同社に限らず大手出版社は同様のサービスを提供しているが、これは大手が中小出版社を傘下に収めるインプリント化が進行したためだ。インプリント出版社は、レーベルと編集機能を残し、グループのインフラを共有する。このインフラをグループ外の出版社にも提供するようになった。
日本でこうしたサービスが発達しなかった理由は、取次会社の存在だろう。書店が注文しなくても新刊を配本し、売れ残りを返品し、代金を回収して出版社に支払う。取次との取引口座があれば、一人でも出版社ができた。講談社グループのKPSや、やはり製造から流通までカバーするKADOKAWAグループの「BECプロジェクト」は、取次が盤石の時代であれば、あえて取り組む必要を感じなかったかもしれない。
雑誌を基盤とした出版流通体制が崩壊し、取次各社もマーケットインに舵を切る中で、ブックセラーズ&カンパニーなどの書店主導の発注や、大手出版社のインフラ共有など、書籍出版の欧米化が進行しているといえる。【星野渉】