【出版時評】2024年2月20日付

2024年2月19日

 KADOKAWAの第3四半期決算は減収減益となったが、3半期累計で出版セグメントの売上に占める電子の比率は約40%、海外の比率は17%に達している。デジタルシフトと海外展開を進める同社の姿勢がはっきりと数字に表れている。

 

 2月15日付の日本経済新聞では「KADOKAWA、東南アであえて『紙』漫画 通販限定で付録」の記事を掲載。インドネシアで最大手の出版社グループと最大の書店網を有するグラメディアと提携し、マンガやライトノベルの紙書籍を発行するという。

 

 同社グループで電子書店「BOOK☆WALKER」と電子取次事業を展開するブックウォーカーも、自社コンテンツに限らず電子書籍の海外展開に力を入れている。2015年に英語版ストア、翌16年に台湾、昨年はタイでストアをオープン。台湾では日本語の電子書籍をそのまま販売することにも取り組む。電子プラットフォームと紙版の両方で海外市場の開拓に取り組む。

 

 マンガやライトノベルという海外で人気のコンテンツを持つからこそともいえるが、こうして開かれていくチャンネルを通して、同グループ以外のコンテンツ、そして多様なジャンルの出版物が海外に出ていくことを期待したい。もともと出版社だからであろうが、同社セグメントで最も海外売上が大きいのは出版である。【星野渉】