【出版時評】2023年8月22日付

2023年8月28日

 一書店の働きかけで出版社が専用重版し、ベストセラーになったことで注目された書泉による「中世の旅」(白水社)拡販は、一般紙などでも大きく取り上げられ話題になった。昨年9月に書泉社長に就任した手林大輔氏にお会いし、公募に応募しての社長就任と聞いて驚いた。

 

 もとはベネッセコーポレ―ションでライツ事業などを手掛けていたという手林氏は、「中世の旅」のようなゲーム・ファンタジー系に受ける企画や、鉄道、アイドルイベントなど同書店が得意とする「他にはない」商材や企画を強化し、オンラインも駆使して売り上げ拡大を図るという。

 

 「知らない」ことは時として強みとなる。「染まっていない」と言い換えてもよい。従来のやり方を客観的に見ることができるし、急激に変化する時代に、思い切って舵を切ることができるからだ。

 

 英米で大手書店の経営建て直しを進めて注目を集めるジェームズ・ドーント氏も金融界から書店経営に転じた。PODなど先進的な取り組みを進めるドイツの書籍取次リブリの経営者も生え抜きではなく、経営のプロだった。

 

 新規参入や、世襲による代替わり、M&Aなど、いろいろな形はあるが、トップを担う新たな人材が書店業界に入ってくることは、業界の改革と活性化につながるだろう。そのためにも、社会に向けては書店の「可能性」をアピールしたい。 【星野渉】