【出版時評】フランクフルト・ブックフェアも中止

2020年9月14日

 中止が相次ぐ国際ブックフェアの中で、フランクフルト・ブックフェア(FBF)もいよいよリアルでの開催中止を発表した。規模は比べものにならないが、日本でもここ数年拡大を続けてきた東京版権説明会が中止を決めた。

 

 国際ブックフェアとして世界最大規模を誇るFBFは、ドイツの出版業界団体であるドイツ図書流通連盟の子会社が運営し、業界団体にとっても、また開催地フランクフルト市にとっても大きな事業だ。そうした関係者への影響は大きいだろう。

 

 しかし、FBFが開かれないからといって、国際的な著作権取引が停滞したり、新刊のプロモーションが大きく滞るとは考えにくい。FBF自体もオンラインイベントを企画しているが、そもそもネットの普及に伴って、各地のブックフェアは縮小の一途をたどっていたのだから。

 

 もちろん、実際に顔を合わせる効果は否定できない。雑談から大きなヒントを得ることもままある。それでも、新しい技術を利用すれば、回線を経由するとはいえ、国内外の取引先などとより頻繁に「会う」ことができる。

 

 出版社によるオンライン商談も、今までほとんど営業担当者が来店しなかった小規模書店にコミュニケーションの機会が増える可能性がある。ただ、これが常態になると交通整理も必要になるだろう。

【星野】