【出版時評】オリンピックへの備えは?

2020年1月14日

 日本出版販売とトーハンが恒例の年末年始の書店売上動向を発表したが、いずれも前年を5~6%上回る好調な数字だった。トーハンの調査や書店新風会の会員アンケートによると、この間は客数も増えているようで、とりあえずは明るい話題になっている。

 

 伸び率40%台と特に増加したコミックは、超人気シリーズの『ONE PIECE』95巻が年末ギリギリの12月28日に発売されたのに加え、18巻が発売された『鬼滅の刃』が大きな売り上げになっている。いずれも集英社のジャンプコミックスだ。

 

 コミックだけに支えられたようにも見えるが、実は書籍も前年を上回るジャンルが多く堅調だ。コンテンツの質、比較的長い休み、穏やかな天候、大型商業施設を中心とした人々のライフスタイルなど、いろいろな要因があったのだろう。

 

 例年、年末年始の数字とその後の関連はあまりないので安心はできないものの、条件が重なれば人々を出版物に向かわせることができるということかもしれない。

 

 そこで今年気になるのがオリンピックだ。国全体が盛り上がることは間違いないだろうが、盛り上がるほど書店に来店する人が減るというのが、これまでの大型スポーツイベントの通例である。ただ、そのことはわかっているので何か手を打てないものか。条件さえ揃えば人は書店に来る。言うは易しか。

 

【星野】