【出版時評】書店の魅力は人に尽きる

2019年4月15日

今年も本屋大賞の発表会が開かれたが、会場は実行委員の書店員をはじめとして、全国から集まった多くの書店人であふれていた。読み手の側が選ぶ賞としては最大といえる規模に成長した原動力が、こうした書店人の情熱であることは間違いない。

 

授賞式で発掘部門の神山裕右『サスツルギの亡霊』を発表した蔦屋書店諏訪中洲店の立木恵里奈さんは、2度の閉店を経験し、担当を持たない立場になっても、この本を薦めたいとの思いを持ち続けたという話を切々と語り心を打った。4月12日付朝日新聞朝刊でもが紹介されていた。

 

ただ、立木さんの話しを聞く限り、社員ではないようだ。会場に来ていた書店人も、休みを取って自腹で来ている人が少なくなかっただろう。

 

このところ増えている小規模書店に人々が惹きつけられるのは、"個人"の思いによる選書や店作りが魅力的だからだし、雑貨やカフェなどとの複合も、書店人が作った棚(品揃え)という書店ならではの魅力があるからこそ、価値を感じてもらえるのだと思う。

 

書店の価値は人に尽きるといって過言ではない。しかも、これほど注目される大賞を生み出し、「本を読んでみよう」と思う人を増やす役割を果たしている。本や出版業界にとってこれほどの価値をもたらす人々に、もっと投資する必要があると考えさせられた。

(星野渉)