
静岡日販会の第36回定期総会が12月2日、静岡市のホテルグランヒルズ静岡で開催され、第35期の会計・事業報告および第36期の事業計画が、事前提供された議案書によって承認された。静岡日販会斉藤行雄会長(谷島屋)のあいさつに次いで、日本出版販売(日販)富樫建社長が2025年度中間決算を基に事業活動を紹介。続いて実施された同社・プラットフォーム創造事業本部地域事業開発チームの植木大志係長による研修講演「地域のプラットフォーム創造 取組報告」では、自治体との連携事例として静岡県長泉町との活動報告などがなされた。
地域の書店・企業・自治体と連携図る

斉藤会長
開会のあいさつで斉藤会長は、12年間にわたり続けてきた児童養護施設への図書寄贈活動について報告。「子どもたちが本当に喜んでいる。小学館刊行のベストセラー『大ピンチずかん』シリーズや旺文社の『学校では教えてくれない大切なこと』シリーズが人気。施設長さんからは創元社の『世界で一番美しい図鑑』シリーズのリクエストがあった」と述べたうえで、「今後もこの事業を皆様の協力を得ながら続けていきたい」と語った。

富樫社長
来賓あいさつで登壇した富樫社長は「全国の書店や企業、自治体の連携をお手伝いすることが当社の役割。静岡経済を活性化させ、グローバルに展開していく」と述べたうえで、自動車メーカー「スズキ」の事例などを紹介。地域共創する事業モデルを提示し、プラットフォーム創造事業本部を通じて、地域活性化につなげる事業企画を提供していく意向を示した。
そのうえで富樫社長は「書店経営の基盤を強化することが重要」とし、25年度の中間決算を基に同社の事業活動を紹介。コンビニエンスストア(CVS)への雑誌配送からの撤退に伴う減収やコミックが厳しいなかで書籍売上が前年同期比で99.2%、返品率28.4%(前年比1.7ポイント減)と堅調であったことについて報告。「ベストセラーにより書店に足を運んでいただくきっかけが増えているように感じる。この流れをさらに強めていく」と強調した。
ブックセラーズ&カンパニーの取り組みについても紹介し、出版社で販売コミットモデルが23社、返品ゼロモデルが4社、計27社が参加。参加書店も609店に達しており、拡大傾向にあることを報告。契約書店全体での実績についても、店頭売上が前年比で1.7ポイント増、返品率24.1%、書店粗利率28.1%だったと報告。加えて市場在庫の偏在解消を目的に25年6月から本格稼働した、書店間で相互に在庫調達する在庫ローリングの取り組みについても説明し、参加書店388店での在庫返品率(25年6~10月)が13.6ポイント減少したことを報告した。
このほか、KADOKAWAとの「マーケットイン・プロフィットシェア取引」において返品率が前年比1.9ポイント減となったことや、雑誌買い切りスキームの拡大、無人営業書店「ほんたす」の取り組みなどについて紹介し、富樫社長は「書店の売上向上や粗利改善に取り組んでいく」と決意を表した。
「BOOKPARK」で3000人集客

植木係長
続いて登壇した植木大志係長が「地域のプラットフォーム創造 取組報告」をテーマに講演。冒頭に9月にオープンし、文喫として4店舗目の出店となる「BUNKITSU TOKYO」について書籍売上が約7割を占め、うち35%が児童書であることを示した。
その後、植木係長は自治体との提携による事業開発事例として、「本を起点としたまちづくりに関する包括連携協定」を締結した静岡県長泉町との取り組みを紹介。締結前の23年9月に実施した、本を起点とした社会実験イベント「駅前リビング」を紹介したうえで、24年10月に文化複合施設「クレマチスの丘」内の旧ヴァンジ彫刻庭園美術館で、長倉書店、マルサン書店、谷島屋書店など県内外5書店の協力・参加のもと実施したイベント「BOOK PARK」の取り組みについて説明。植木係長は1日の来場者数が約3000人に達し、満足度も92%となったことを報告したうえで「地域企業からの協賛や物販において約1000万円の経済効果があった」とし、「本を起点としながらもマルシェやコンサートなど、地域に喜んでもえた企画にすることが出来た」と手応えを語った。
このほか25年3月にオープンした長泉町の鮎壺公園「鮎壺テラス」内に新設されたライブラリスペースの企画・プロデュースなどについて報告され、植木係長は「今後も書店×公共をテーマに、皆様と一緒に地域の方が喜んでいただく、活性化につなげる取り組みをしていきたい」と呼びかけた。

後藤副会長
続いて「BOOKPARK」の参加書店として、長倉書店・長倉一正店長が書店業の魅力やイベント参加への感想などを語った後、静岡日販会・後藤久徳副会長(株式会社ゴトー)が閉会のあいさつで「現実的な問題に向けると厳しいが、本の可能性を再認識できる会となった。児童養護施設への寄贈についても本屋をやっていて良かったと実感できる取り組み。皆様とともに一冊でも多くの読者に届けていきたい」と締めくくった。
