トーハンと日本出版販売(日販)の大手取次2社が発表した2025年年間ベストセラーは、いずれも鈴木のりたけ『大ピンチずかん』(小学館)が総合1位となった。文庫を含めた総合(トーハン)では映画も大ヒットした吉田修一『国宝』(朝日新聞出版)が1位だった。
「大ピンチずかん」シリーズは、日常に起こるピンチを紹介し、ピンチを通じて子どもが自分の失敗や感情を受け入れるきっかけを作る作品として、シリーズ累計270万部の大ヒットとなっている。日販のランキングではシリーズ3作目が今年上半期と年間総合第1位を獲得した。
『国宝』は21年9月に文庫版が発売され、今年6月公開の映画大ヒットによって、電子版も含めたシリーズ累計発行部数は200万部を突破。トーハン総合(文庫含む)3位で日販の文庫2位になった有吉佐和子『青い壺』(文藝春秋)は、1977年に初版を刊行し2011年に文庫が復刊され、原田ひ香による推薦帯なども反響を呼びヒットが継続している。
総合2位には両社とも第22回本屋大賞受賞作の阿部暁子『カフネ』(講談社)が、3位にトーハンはポケモン/きのしたちひろ『ポケモン生態図鑑』(小学館)、日販は両@リベ大学長『改訂版本当の自由を手に入れるお金の大学』(朝日新聞出版)がランクインした。
日販はランキングの傾向として、「身体や心の癒しにつながる作品や、共感をもたらす作品、すでに定評のある作品がランキング上位を占める結果となった。ここには、近年高まっているウェルビーイング志向や“失敗しない選択”をしたいという消費者の志向が強く表れていると考えられ、とりわけ、口コミやSNS評価における共感性や確実性の高まりは、近年のベストセラーランキングを大きく左右する要因になっている」と分析している。
両社とも集計期間は24年11月20日から25年11月18日まで。「総合ランキング」では「全集」「文庫」「コミック」は除く。価格は本体価格。
日販ベストは約2500軒の書店POS販売データを基に、全国の書店での販売状況を総合的に勘案して作成。同日発売の上下巻等は上位の巻の順位で掲載。発行年月は日販の書店向け情報提供サービスに登録されているデータを基準にしている。
