PHP研究所は9月27・28日に、11万部を突破した『こうやって頭のなかを言語化する。』と、25年5月に刊行した伊坂幸太郎『パズルと天気』両書籍の広告を、全国地方紙38紙に出稿する。
好調書籍や注力書籍の売り伸ばしを図るうえで多くの選択肢がある中、地方紙への出稿を選んだ背景について、企画者である同社第一事業普及本部本部長の植田光太氏は「SNS広告、全国紙の強化、鉄道広告などいろいろな施策があるが、当社がこれまで着手した経験がないのが地方紙出稿だった」と話す。同社はこれまで単発、もしくは小規模での地方紙出稿はあったものの、この規模での地方紙広告展開は初めてだ。
多くのヒット作を世に送り出している同社だが、その一方で地方書店チェーンや店舗、その顧客である地方の読者に情報を届け切れていないという思いがあったと植田氏は言う。また、地方の書店から同社に対し、地方紙出稿の要望が数多く寄せられていたことも、今回の広告企画の実施を後押しした。植田氏は出稿する両書籍について「決して都心の書店だけで売れているわけではない。各地方でも着実に実績を上げており、地方紙出稿の効果も期待できる」と大々的な地方紙広告戦略に踏み切った背景について語る。
地方チェーンに加え全国チェーン書店の本部においても、地方紙広告への期待値は高い。全国紙への広告掲載時よりも反応が良く、展開の拡大や在庫切れのリスクを考慮して積極的に発注する書店も多いという。
植田氏によれば両書籍は幅広い読者層に訴求できる作品で、全国紙と異なるアプローチをすることで、これまでリーチできていなかった新たな読者の購買喚起につなげられるという。
例えば『こうやって頭のなかを言語化する。』においては、日経新聞での広告の場合、ビジネスパーソンに訴求するコピーであったのに対し、今回の地方紙では50~70代を読者層として想定。「言語化」ではなく、「とっさに言葉が出てこない」というコピーに切り替えることで、地方紙の読者層や普段あまり本を手に取らない層へのアプローチを図る。植田氏は同書について「家族や友人・知人とのコミュケーションにも役立ていただける内容で、地方紙読者との親和性は高い」と強調する。
さらに、『パズルと天気』について植田氏は「ファンであっても新刊が出たことを知らない地方の潜在的読者は多数いるはず。今回の地方紙広告を通じて知ってもらうことで、さらに拡販できる可能性は十分にある」と話す。
一方、出稿する地方紙においてはその媒体を絞り、厳選するという選択もあったが、今後の知見を蓄積することを想定し、同社は38紙への出稿を決めた。植田氏はその理由について「書店の先にいる読者に情報と商品を届けることが最優先」としたうえで、「今回の地方紙出稿プランは、マーケティングの意味合いもある。両書籍をあまねく広く出稿することで、これからの地方紙戦略にどう生かしていくかを検証したい」と今後を見据える。
各地方紙に広告が掲出されるまで1カ月を切り、受注活動は佳境を迎える。これまで地方紙出稿が少なかった同社の試みが地方の読者に届き、書店での実績につながるのか。今後の動向に注目が集まる。