新潮文芸振興会 第24回小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞受賞作決定

2025年9月12日

 新潮文芸振興会は8月28日、第24回「小林秀雄賞」「新潮ドキュメント賞」の選考会をオークラ東京で行い、受賞作品が決定した。小林秀雄賞は川本三郎『荷風の昭和』《前篇》関東大震災から日米開戦まで/《後篇》偏奇館焼亡から最期の日まで(新潮社)が、新潮ドキュメント賞は鈴木俊貴『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)がそれぞれ受賞した。

 

 小林秀雄賞は、自由な精神と柔軟な知性に基づいて新しい世界像を呈示した作品一篇(小説・戯曲・詩歌等のフィクションは除外)に授与される。選考委員は、片山杜秀、國分功一郎、関川夏央、堀江敏幸、養老孟司の各氏。今回の授賞理由は、「荷風とともに散歩をするかのように、文学史や映画史を参照しながら、『荷風の昭和』に注釈をつけていく。よどみない筆運びで、最後には荷風と著者が一体化する」としている。

 

『荷風の昭和』《前篇》関東大震災から日米開戦まで(新潮社)

『荷風の昭和』《後篇》偏奇館焼亡から最期の日まで(新潮社)

 

 新潮ドキュメント賞は、ノンフィクション作品(雑誌掲載も含む)で、ジャーナリスティックな視点から現代社会と深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品一篇に授与される。選考委員は、池上彰、梯久美子、櫻井よしこ、藤原正彦、保阪正康の各氏。授賞理由は、「一般の人が見逃しがちな鳥の生態を独創的かつ画期的な方法で調べあげた世界的な大発見を、ドキュメントとして見事に描いた」としている。

 

『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)

 

 贈呈式は10月10日、都内で行なわれる予定。両賞とも記念品および副賞100万円が贈呈される。

 

川本三郎(かわもと・さぶろう) 1944年東京都渋谷区生まれ。著書に『大正幻影』(岩波現代文庫、サントリー学芸賞受賞)、『荷風と東京』(岩波現代文庫、読売文学賞受賞)、『林芙美子の昭和』(新書館、毎日出版文化賞・桑原武夫学芸賞受賞)、『白秋望景』(新書館、伊藤整文学賞受賞)、掌篇集『遠い声/浜辺のパラソル』(ベルリブロ)など多数。訳書にカポーティ『夜の樹』、『叶えられた祈り』(共に新潮文庫)など (c)新潮社

鈴木俊貴(すずき・としたか) 1983年東京都生まれ。東京大学准教授。動物言語学者。日本学術振興会特別研究員SPD、京都大学白眉センター特定助教などを経て現職。文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本生態学会宮地賞、日本動物行動学会賞など受賞多数。シジュウカラに言語能力を発見し、「動物言語学」を創設。初の単著となる本作で河合隼雄学芸賞を受賞