ADKマーケティング・ソリューションズ(ADKMS)は8月27日、ブレインパッドと、ゲーム業界やコンテンツ産業向けの制作物に含まれる倫理的な問題の有無を、クライアント企業から提供を受けた基準に基づき、AIが一次判定することで、担当者の最終判断を支援する「エージェント“リンリー”」を開発したと発表した。
ADKMSは、ブレインパッドとともに、生成AIの活用推進を目的に「共創Labo」を設立し、マルチモーダルAIを活用して編集・参照業務の効率化を支援する共同開発ツール「VisionLinkAI」をゲーム業界、コンテンツ市場などのエンターテインメント業界への展開を図り、クライアント企業に向けた提案などを進めている。
「エージェント“リンリー”」は、「VisionLinkAI」を展開する中で、クライアント企業より要望を受けて開発。従来は人が確認せざるを得なかった制作物の倫理チェックを、生成AIによって一部チェックを代替することが可能となる。クライアント企業から提供を受けたガイドラインや基準を学習した生成AIが、制作物の内容を一次判定することで、担当者の負担軽減を可能にする。

エージェント“リンリー”のイメージ図
「VisionLinkAI」は、編集業務や販促企画時に過去のコンテンツを参照できるよう、タグ付けなしでアップロードした画像・イラスト・映像を、マルチモーダルAIにより意味づけできるように開発。同ツールが有する「画像から意味を理解する」という特徴をふまえて、「ゲーム開発の成果物に倫理的な問題がないかを確認できないか」との相談がクライアント企業より寄せられたことで、「VisionLinkAI」の機能を参考にした「エージェント“リンリー”」の開発と検証を進めた。
「エージェント“リンリー”」は、国、地域、人種、コミュニティごとの倫理的な基準や、ゲームタイトルに付与される年齢制限の基準を学習し、画像、テキスト、動画すべての制作物を対象に、倫理的な問題の有無を判断できる。2024年8~12月にかけて、検証結果を受けてPoC(概念実証)を行った。大手ゲーム会社とのPoCでは、倫理チェックに関する工数を40%削減できるとの試算結果が出た。
また、同ツールは海外の国、地域、文化での倫理基準も、クライアント企業のチェック担当者監修のもとで基準を設けることにより、アラートを出すことが可能。
今後は「エージェント“リンリー”」を使用することによって、コンテンツの開発現場においても制作物の倫理問題の有無を細かく確認できるようになり、開発リードタイムの短縮が期待される。既に大手ゲーム会社への導入が決定しており、今後はゲーム業界だけでなく、コンテンツ業界への導入や、チェック対象の広範囲化を予定している。
ブレインパッド・関口朋宏代表取締役社長CEOコメント「ADKMSとの『共創Labo』設立後、IPビジネスに関わる皆さまから多くのご相談をいただいたのは、この領域においても生成AIの活用が期待されていることの表れだと思っている。『エージェント“リンリー”』は、倫理チェックの有無を確認する担当者の工数削減だけでなく、日本が世界に誇る作品が生み出されるスピードの向上にもつながると思う。引き続きADKMSとともに、日本のIPビジネスの成長に貢献していく」
ADKMS・竹下伸哉統括執行役員データ&ソリューション開発ソリューション統括担当兼MI本部長コメント「『エージェント“リンリー”』は作品リリース後の炎上によりファンとの関係性が崩れてしまうことを、事前に防げる可能性があると思っている。多くの方に長く愛される作品のお手伝いができるよう、引き続きブレインパッドとともにエンターテイメント業界に貢献していく」