文化通信社は7月31日、丸善ジュンク堂書店取締役で丸善丸の内本店店長、文具営業部部長、店舗業態開発部部長を務める篠田晃典氏を招き、オンラインセミナー「書店が仕掛けるIPビジネスの目指す先―丸善ジュンク堂書店『EHONS(エホンズ)』の成果と可能性」を開催した。

オンラインセミナーを行う篠田氏
同社は、絵本キャラクターのグッズ制作・販売を行う業態「EHONS」を2021年に開始。〝待ち〟の姿勢が強かった書店ビジネスを転換させる試みであると同時に、出版コンテンツの二次利用で業界全体に収益をもたらす事業としても注目されている。
初めに、篠田氏はEHONSと名づけたIPビジネスの導入背景として、消費行動の変化、ECとの競合激化、スマートフォンの台頭、コロナ禍の影響といったさまざまな要因による外部環境の変化に言及。出版業界全体が縮小傾向にある厳しい現状を踏まえ、「版元に依存する書店のビジネスモデルには限界がある。版元やメーカーが作ったものを仕入れて売るだけではなく、書店自ら企画し、作る」発想の転換をはかり、絵本のIPを使ったオリジナルグッズブランドの構想を固めていったという。
新規事業検討に際しては「他社が実施していないコンテンツ」「長期間ファンを獲得している」「丸の内本店の立地や書店の人材を生かせる」などさまざまな条件があり、それをクリアするのが「絵本」ジャンルだったと、立ち上げまでの経緯も明かした。
EHONSは21年10月にスタートし、現在は9店舗を展開。立ち上げから3年半で約70作品を商品化、オリジナル製造商品1,200SKU(最小在庫単位)超え、製造個数150万個、販売個数100万個に達した。売上は年ごとに1.5倍のペースで成長しているという。
加えて篠田氏は、書店の新規顧客の獲得につながる「集客装置としての機能」、インバウンドや海外での発展も視野に入れた「客層の広がり」、同社とメーカー、出版社、著者との「新しいパートナーシップ形成」も成果として強調し、「リスクを背負っても、良いコンテンツのIPを生かし、自社で展開することが集客につながり、書店生き残りの可能性を高める事業となっている」と分析した。
今後の可能性として、篠田氏は、EHONS店舗の拡大はもちろん、EC販売、企業・自治体とのコラボレートなど、販売チャンネル拡大を挙げた。さらに、コミックや小説など絵本以外のコンテンツへの派生、「EXPO2025大阪・関西万博」やスポーツ大会オフィシャルなど各協会からライセンスを受けたオフィシャルショップ展開の実施例も紹介したうえで、ライセンス取引による権利ビジネスへの進出に意欲を示し、「日本には絵本やコミックに限らずさまざまな素晴らしいIPがある。業界全体でその活用を考えていきたい」と結んだ。
〈今後のセミナー〉
8月28日(木)15:30〜19:00(セミナー15:30〜16:45 懇親会17:00〜19:00)
三洋堂ホールディングス代表取締役社長・加藤和裕氏による「無人営業が広げる書店の将来展望―三洋堂ホールディングスのサバイバル戦略」を会場とオンラインのハイブリッドで開催する。※懇親会は会場参加者のみ
申し込みはPeatix▽
https://peatix.com/event/4484307(会場開催)
https://peatix.com/event/4486778(オンライン開催)
9月11日(木)15:00〜16:30
PubteX代表取締役社長・渡辺順氏による「PubteXが目指す出版流通DX - RFID事業の進捗と出版流通改革実現に向けた課題・見通し」をオンラインで開催する。
申し込みはPeatix:https://peatix.com/event/4515609