【寄稿 各国書店事情レポート】 オンライン書店や割引と戦う韓国の書店 〈Report from Korea〉白源根

2025年7月16日

 韓国の書店数は1994年に5683店舗でピークに達したが、オンライン書店の登場と激しい割引競争で減少し始めた。2013年に2331店舗だった書店数は、14年11月に施行された図書定価制(再販制)の強化政策で増加傾向に転じ、21年には2528店舗に増えた(書店数は韓国書店組合連合会による)。以来、大きな変化はなく現状を維持している。

 

韓国 書店数グラフのサムネイル

 

 政府機関である韓国出版文化産業振興院が発表した「2024地域書店実態調査」によると、全国の書店数は3064店であるが、この数字は隔年調査である韓国書店組合連合会の書店統計よりおよそ500店舗多いことになる。これは、韓国書店組合連合会で実施している「地域書店認証制」の基準で、子ども向けの全集書店や宗教書店などを集計から除外したのが原因で、実際にはこの5年間大きな変化はなく約3000店前後の書店が全国で運営されている。

 

 一方、株式会社街の書店が集計する個人独立書店の数は、20年の634店から24年には926店へと増加し、個人が営む個性豊かな小さな書店の増加傾向が表れているものの、その増加率は低くなっている。一方では、学習参考書を中心に中学校や高校の前で営業してきた伝統的な書店は、学齢人口の減少により減っている傾向だ。

 

圧倒的シェアのオンライン書店

 

 大韓出版文化協会の『2024年出版市場統計報告書』(大手出版社71社の売上を集計)によると、24年の総売上は4兆8911億ウォン(約5380億円)で、前年比0.1%減少した。しかし、韓国出版文化産業振興院の『2024出版産業実態調査』によると、20~23年の出版市場は右肩上がりである(別表参照)。

 

韓国の出版・書店数の推移のサムネイル

 

韓国の出版事情統計表のサムネイル

 

 韓国の出版流通の最大の特徴は、オンライン書店のシェアが60%以上と圧倒的に高いことだ。その残り40%のうち、大型書店が20%、小型書店(地域書店)が20%という割合になる。大手のオンライン書店と大型チェーン書店は、すべての出版社と直接取引をするため、地域書店に出版物を卸す取次経由の比率は日本に比べて極めて低い。ブックセンと教保文庫(大型書店チェーン)が取次業界を二分している。

 

 一般書店のマージン率は、単行本の場合、平均的に買い切りが30%、委託だと25%であり、出版社と直取引をする大型書店やオンライン書店は、これよりも5%以上マージン率が高い。オンライン書店の売上はここ5年間でも増加傾向にあり、一般書店の数が維持されているとはいえ経営状態は厳しいのが現状だ。

 


 

白源根(Baek Wonkeun) 1995年から韓国出版業界のシンクタンク「韓国出版研究所」責任研究員、2015年に「本と社会研究所」を設立し代表に就任。文化体育観光部の定期刊行物諮問委員、出版都市文化財団実行理事、京畿道の地域書店委員長、韓国出版学会の出版政策研究会長、韓国出版文化産業振興院のWebマガジン「出版N」編集委員、ソウル図書館ネットワーク委員長、韓国文学翻訳院「list-Books from Korea」編集諮問委員、出版評論家、日本出版学会正会員など。

 

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